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国立がん研究センター、医薬品開発に診療情報などを活用するための研究を富士通と共同で

DIGITAL X 編集部
2021年4月8日

国立がん研究センターは、医薬品開発や治験、予防医療などに、日々の診療や個人の健康管理などで得られるデータを活用する研究を2021年3月16日に開始した。富士通と共同で取り組む。医薬品開発や治験のスピード向上を支援するのが狙い。富士通が2021年3月18日に発表した。

 国立がん研究センターは2021年3月16日、富士通と包括的な共同研究契約を締結した。製薬企業における医薬品開発や治験、予防医療などに、電子カルテシステムの診療情報などのデータを活用することが目的だ。共同研究では3つのプロジェクトを実施する(図1)。

図1:国立がん研究センターと富士通による共同研究のイメージ

 第1のプロジェクトでは、診療情報などを製薬会社とシェアする仕組みを構築し、医薬品の開発速度や品質の向上へ寄与できる可能性を検証する。同時に、診断や治療を支援するAI(人工知能)技術の開発に向けたデータ活用の有効性も検証する。

 電子カルテには、患者の症状や医師の所見などが文章で記載されており、データとして利用しやすい構造にはない。そうした診療情報や症例研究情報、地域患者の健康情報などを匿名化し、製薬企業が扱いやい形式に加工し、安全性および質の高いデータとして提供する。

 第2のプロジェクトでは、治験業務のデジタル化を進め、新たな治験サービスモデルの確立を目指す。電子カルテシステムの診療情報を自然言語解析技術で処理することで、治験における適合患者の抽出業務の速度と精度を高める。現状は、電子カルテシステムの診療情報を参照し人手でマッチングを図っている。

 加えて、日本における治験データの世界標準への適応を推進する。複数の国・地域が実施する国際共同治験への参画を支援する。

 第3のプロジェクトでは、医療データを安全・安心に利用するためのプラットフォーム(共通基盤)の構築を目指す。がん研究センター東病院が保有する電子カルテシステムの診療情報や症例研究の情報、さらに同病院に通院している患者の健康情報などを匿名化し、医薬品開発や予防医療などに利用できるデータとして製薬企業などに提供する共通基盤を整備する。

 なお富士通は、共同研究の成果を元に、生活者のウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)を対象にしたプラットフォームおよびサービスを2021年度中に開発し、製薬企業などに提供する計画である。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名国立がん研究センター
業種医療・健康
地域千葉県柏市(国立がんセンター東病院)
課題医薬品開発や治験のスピード向上を支援したい
解決の仕組み電子カルテシステムの診療情報や症例研究の情報といったデータを安全かつ効率的に利用できるデータ共有環境を構築する
推進母体/体制国立がん研究センター、富士通
活用しているデータ電子カルテシステムの診療情報や症例研究の情報、地域患者の健康情報などのデータ
採用している製品/サービス/技術電子カルテシステムの診療情報を匿名化する技術、自然言語解析技術
稼働時期2021年3月16日(共同研究の開始日)