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SMBCグループ、金融取引の不正検出などに量子アニーリングを適用

DIGITAL X 編集部
2021年4月12日

三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が、金融取引の正常/不正を識別するためのAI(人工知能)モデルの構築手法に量子アニーリングを適用することで、従来手法よりも不正取引の検出率が向上することを確認したと2021年3月22日に発表した。日本総合研究所、NECと共同で検証した。

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は2020年2月から、金融取引の不正検出に対し、組み合わせ最適化問題に特化した量子アニーリングの適用を日本総合研究所、NECと共同で検証してきた。

 具体的には、(1)機械学習に必要となる学習データの品質向上と、(2)ストレステストのシナリオ策定における経済指標の調整である。量子コンピューターは、カナダD-Wave Systems製を使用した。

 機械学習における学習データの品質向上では、検証の結果、量子アニーリングを用いることで、同一のAIモデルであっても学習データの品質相違から、不正検知の再現率(検出できる不正な取引の割合)が従来のランダム手法より6~15%、SMOTE手法より3~6%向上することを確認した(図1)。

図1:不正検知の再現率の向上効果

 不正を検知するためには、正常な取引データと不正なデータが必要だが、不正事例はほとんど存在しないのが実情だ。今回、量子アニーリングが持つ「規則性のない数値を生み出せる」という特性を使って、統計的に確からしい不正データの生成器を開発した。取引データには、海外クレジットカード会社の実際の取引履歴から作成された公表データを用いた。

 一方、ストレステストのシナリオ策定では、実務で使用可能な精度の解を得るために必要な調整作業の時間を従来の方法に比べて約6分の1に短縮できることを確認した(図2)。

図2:量子アニーリングによる調整イメージ

 ストレステストは資本の健全性を検証するためのもので、シナリオには業務戦略策定に重要なリスクを含ませる必要がある。そのための経済指標は、数理モデルを活用したソフトウェアによる推計に専門家の推定も勘案しているが、推定した一部の指標と他の関連指標の整合性を図るための作業に多くの時間を費やしている。この調整作業を最適化問題として定式化し、量子アニーリングの手法で解いた。

 3社は引き続き、機械学習への応用や金融資産の価格変動リスク予測など業務活用に直結するテーマに量子コンピューターを適用し、顧客サービスの向上を目指すとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三井住友フィナンシャルグループ
業種金融・保険
地域東京都千代田区(本社)
課題金融取引における不正取引の検出業務の効率を高めたい
解決の仕組みAI(人工知能)システムに学習に必要な不正データの生成や、ストレステストのシナリオ策定における経済指標の調整に量子アニーリングを適用する
推進母体/体制三井住友フィナンシャルグループ、日本総合研究所、NEC
活用しているデータ海外クレジットカード会社の実際の取引履歴から作成された公表データなど
採用している製品/サービス/技術量子コンピューター(カナダD-Wave Systems製)
稼働時期2020年9月~12月(検証実施期間)