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富士通、小山工場の遠隔支援や運搬の自動化に向けローカル5Gを導入

DIGITAL X 編集部
2021年4月20日

富士通はネットワーク機器の製造拠点である栃木県・小山工場にローカル5G(第5世代移動通信システム)システムを導入し、2021年3月30日に運用を開始した。エッジコンピューティングやAI(人工知能)解析を組み合わせ、MR(Mixed Reality:複合現実)技術を使った現場作業の遠隔支援や運搬の自動化を目指す。同日に発表した。

 富士通がローカル5G(第5世代移動通信システム)を導入したのは同社小山工場(栃木県小山市)。実際に同工場でネットワーク機器を製造する富士通テレコムネットワークスが、28GHz帯のNSA(ノンスタンドアロン)構成と4.7GHz帯のSA(スタンドアロン)構成のローカル5Gを構築した。

 ローカル5G環境を使って富士通テレコムネットワークスは、(1)作業のトレーニング・遠隔支援、(2)リアルタイムでの作業確認、(3)運搬作業の自動化を推進する。(1)と(2)には、広帯域で大容量のデータ通信に適した28GHz帯のローカル5Gを使って工場内にエッジコンピューティング環境を構築。(3)には電波の到達距離が長い4.7GHz帯のローカル5Gを利用する(図1)。

図1:小山工場におけるローカル5Gの活用イメージ

 作業のトレーニング・遠隔支援では、製品の3D(3次元)モデルと作業指示を現場作業者が装着するMR(Mixed Reality:複合現実)デバイスに映し出す。熟練者や開発者が遠隔から現場作業を指導・支援する(図2)。

図2:MRデバイスを装着してトレーニングする様子(左)とMRデバイスに映し出された製品の3Dモデル

 28GHz帯のネットワークを使うことでMRデバイスへ大容量データをリアルタイムに送信し、遠隔からの作業指導や支援の効率を高める。MRデバイスには「Microsoft Hololens 2」(米マイクロソフト製)を使用する。

 リアルタイムな作業確認では、エッジコンピューティング環境とMES(Manufacturing Execution System)を連携し、組み立て手順に基づいて指定する部品ケースから正しい部品を取り出し、基板の正しい位置に実装しているかどうかを判定する。そのために、組み立て作業を複数の高精細カメラで撮影し、その映像から作業者の手と部品ケース、部品をAI(人工知能)技術で認識する。

図3:AI映像解析による組み立て作業の判定画面

 AIシステムによる判定結果は、MRデバイスの映像や音声を通して作業者へリアルタイムにフィードバックし、正しい作業の遂行を支援することで検査の省力化と品質の向上を図る。

 運搬作業の自動化では、工場内外および無人搬送車に高精細カメラを搭載し、その映像をAI技術で解析することで、無人搬送車の位置認識と走行制御を3次元で高精度に実行する。建屋内および建屋間の運搬作業や部品・製品の積み下ろしを自動化し、運搬コストを削減する。

 富士通は今後、小山工場における様々な業務にローカル5Gを適用し、その効果を検証する。2021年度内に製造業向けサービスとしての提供を目指す。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名富士通/富士通テレコムネットワークス
業種製造
地域栃木県小山市(小山工場)
課題技術伝承や現場作業の高精度化、運搬作業の自動化を図りたい
解決の仕組みローカル5G環境を構築し、製品の3D(3次元)モデルを現場作業者に提供したり、映像から作業者内容をAI(人工知能)システムで判定したりする。無人搬送車の位置把握と制御の精度を高める
推進母体/体制富士通、富士通テレコムネットワークス
活用しているデータ製品の3D(3次元)モデル、高精細カメラが撮影した作業映像、無人搬送車の位置情報など
採用している製品/サービス/技術28GHz帯のNSA(ノンスタンドアロン)構成と4.7GHz帯のSA(スタンドアロン)構成のローカル5G環境(富士通テレコムネットワークスが構築)、MRデバイス「Microsoft Hololens 2」(日本マイクロソフト製)
稼働時期2021年3月31日