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横河電機、プラントの自律制御に向けた5G活用を実証実験へ

DIGITAL X 編集部
2021年4月30日

横河電機は、プラントの自律制御を目標にしたデジタル技術の検証に取り組む。そのために、5Gやクラウド、AI(人工知能)を使ってプラントを遠隔制御する実証実験をNTTドコモと共同で実施することで2021年4月13日に合意した。2021年4月14日に発表した。

 横河電機が目指すのは、化学薬品や石油などを扱うプロセス産業の顧客が持つプラントにおいて、既存のシステムを変更することなく、AI(人工知能)技術を使って自律制御ができる環境の実現だ。自動操業が進んだ産業像として「IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)」を提唱している。

 IA2IAの実現に向け横河電機はNTTドコモと共同で、クラウドを介してプラントを遠隔制御するデモ環境を2021年度内に構築。ネットワーク環境として現在主流の無線通信規格LTEと、今後の普及が見込まれる5G(第5世代移動通信システム)との通信性能を比較・評価する。

 デモ環境では、横河電機が開発した制御用AIシステムをクラウド上に、5Gの通信モジュールを制御トレーニング用の実験装置の一種である三段水槽に、それぞれ装着し、遠隔から水位を制御する(図1)。

図1:横河電機がNTTドコモと共同で実施すする実証実験の概要

 三段水槽は、階段状に設置された水槽において、水が上段から下段へと順に流れていく中で、下段の水槽の水位を制御するもの。プロセス産業においては、流体の適正な流量コントロールが難しいとされ、適正な制御が製造現場の生産性を高めることにつながる。

 クラウド環境には、ドコモの「ドコモオープンイノベーションクラウド」を使う。5GとMEC(Multi-access Edge Computing)の環境を持つ。実験では、高速・大容量・低遅延を特徴とする5Gを使うことで遠隔制御における低遅延が実現できるかどうかを検証する。

 プラントの遠隔/自動制御に向けては、LTEによる通信ではクラウドからの制御時に遅延が発生することが技術的課題になっている。

 プロセス産業では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景にプラントの自律制御へのニーズが急速に高まっている。

 横河電機が2020年にプロセス産業を対象に実施した調査では、回答者の64%が2030年までにプラントの完全な自動操業を見込んでいる。将来的には、AI技術を使って無人化した自律制御の仕組みが普及すると予想されている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名横河電機
業種製造
地域東京都武蔵野市(本社)
課題プロセス産業におけるプラントの運転においてAI技術を使った自律制御を実現したい
解決の仕組みクラウドから制御装置への通信に低遅延の5G通信を使用する
推進母体/体制横河電機、NTTドコモ
活用しているデータ三段水槽の制御信号など
採用している製品/サービス/技術ドコモオープンイノベーションクラウド(NTTドコモ製)
稼働時期2021年度内