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三菱重工工作機械、工場の無線化に向けた5Gの実証実験で有効性を確認

DIGITAL X 編集部
2021年5月7日

三菱重工工作機械は、栗東工場(滋賀県栗東市)においてネットワーク環境の無線化に向けて5G(第5世代移動通信システム)を活用する実証実験を実施し、その有効性を確認した。実験に参加したNECが2021年4月22日に発表した。

 三菱重工工作機械は2021年1月から2月の1カ月間、栗東工場(滋賀県栗東市)において5G(第5世代移動通信システム)を使って工場内のネットワーク環境を無線化するための実証実験を実施した。5Gにより無人化や作業効率を高めることで、労働者や熟練工の不足や顧客ニーズの多様化に伴う変種変量生産への対応といった課題を解決するのが目的だ。

 実験では、工場設備の制御や映像伝送などにおける5Gの導入効果および機能・運用面から検証した。具体的には、(1)変種生産に資する制御系ネットワークの無線化、(2)無軌道型AGV(無人搬送車)の遠隔制御、(3)現場作業員を対象とした機器の遠隔保守作業支援のアプリケーションを対象にした。

 制御系ネットワークの無線化では、産業用イーサネットのEthernet/IPとCC-Link IEを対象に5Gによる通信を評価した(図1)。5G基地局の設定を最適化することで遅延や停止を0.1秒未満に抑えながら、長時間の安定通信が可能なことを確認した。

図1:制御系ネットワークの5G無線評価機器

 無軌道型AGVの遠隔制御では、無軌道型AGVに監視カメラを搭載し、周囲の環境を確認しながら遠隔制御した。通信エリアを拡張するために無線LAN装置も設置した(図2)。

図2:無軌道型AGVの遠隔制御を対象にした5Gシステムの構成

 結果、金属遮蔽物が多い工場内において、常時10メガビット/秒以上の高精細画像の伝送とAGVの制御信号を途絶なく同時に通信できることを確認した。5Gと無線LANの切り替えもAGVの制御を止めずに運用できたという。

 機器の遠隔保守作業支援では、生産設備の保守作業を遠隔支援するシステムをクラウド上に構築し、現地映像をリモートで共有した(図3)。同時に、熟練工が現場にいなくても掘削中の工具の摩耗状態を把握するために、工作機械の振動データを収集・解析し、現場にリアルタイムでフィードバックする仕組みも構築した。

図3:遠隔保守作業の支援を対象にした5Gシステムの構成

 結果、現場作業員へのスマートグラスを使った情報提供と、遠隔保守員へのWebアプリケーションによる設備状態の情報提供において、5Gの有効性を確認した。

 実験では、これらのアプリケーションのほか、電波環境を示す情報をクラウドに収集し、工場内の電波状況を示すマップを動的に生成ができることも確認している(図4)。

図4:工場内の電波環境を動的に示す電波マップの例。クリックAR(拡張現実)を使って可視化した

 今回の実験は、NEC、NTTドコモ、サンリツオートメイション、構造計画研究所と共に実施した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三菱重工工作機械
業種製造
地域滋賀県栗東市(栗東工場)
課題労働者や熟練工の不足、顧客ニーズの多様化による変種変量生産
解決の仕組み5Gを使って工場内に高速・大容量の無線通信環境を構築し、機器や無軌道型AGV(無人搬送車)の遠隔制御、現場作業員を対象とした遠隔保守作業の支援などを可能にする
推進母体/体制三菱重工工作機械、NEC、NTTドコモ、サンリツオートメイション、構造計画研究所
活用しているデータ無軌道型AGV(無人搬送車)に搭載した監視カメラが撮影した映像、工作機械の振動データ、機器類の制御信号など
採用している製品/サービス/技術マルチロボットコントローラ、クラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」(いずれもNEC製)など
稼働時期2021年1月~2月の1カ月間(実証実験の期間)