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東急建設、トンネルを掘るシールドマシンを操作・制御するAIシステムを開発

DIGITAL X 編集部
2021年6月17日

東急建設はトンネル工事に使用するシールドマシンの操作をAI(人工知能)技術で支援するシステムを開発し、実証実験を実施した。システムは、協立電機とAI技術を持つベンチャー企業Automagiと共同で開発した。2021年6月2日に発表した。

 東急建設が開発した「シールドマシンAI掘進システム」は、トンネルを掘るシールドマシンを操作・制御するためのシステム(図1)。掘削する地盤の条件やシールドマシンの位置・姿勢などに応じて、トンネルの最先端(切羽)における掘削面の圧力を適切な値に維持しながら、計画通りにシールドマシンの方向を精緻に制御する。オペレーター個人の経験と技能に継承しながら、安全と品質を安定的に維持するのが目的だ。

図1:「シールドマシンAI掘進システム」の運用イメージ

 AI掘進システムは、(1)「AI予測システム」と(2)「AIアシスタントツール」からなる。AI予測システムは、掘削時に得られる様々な計測データを取り込み、学習することで最適な制御量を予測する。予測値は、シールドマシンが1ミリメートル掘進するごとに出力する。学習はリアルタイムに実行し、10~20メートル程度の学習区間があれば、作業現場の特性に適応できるとしている。

 AI予測システムに基づく動作モードには、予測値に基づきオペレーターの操作を支援する「制御支援モード」と、予測値からオペレーターの関与なしに制御する「自動制御モード」がある。

 AIアシスタントツールは、予測した制御データをグラフなどに可視化したり、シールドマシンに伝送したりする。遠隔地からもデータを確認できる(図2)。昼夜施工における作業の引き継ぎを想定し、過去の掘進制御履歴を動画で再生する機能も持たせた。

図2:推進制御履歴を示す管理画面の例。動画として再生ができる

 東急建設は、同システムの実証実験を東京都内で施工中のトンネル工事で実施した。制御支援モードでは、切羽の圧力調整と機体の方向制御を実証。自動制御モードでは切羽の圧力調整を実証した。

 結果、制御支援モードでは、高い予測精度を得られ、オペレーターが自らの判断に誤りがないことをチェックするツールとして有用なことが確認できた。自動制御モードでは、所要の精度内で切羽の圧力を保持しつつ、シールドマシンを掘進させることができたという(図3)。

図3:自動制御モードでの実証実験の様子

 東急建設によれば、近年のトンネル工事では大規模な災害事故が多発しており、原因の多くは工事従事者のヒューマンエラーだとされる。一方で、都市部を中心としたトンネル工事では難度の高い工事が増加しており、シールドトンネル工事の安全と品質を安定的に確保するために、工事従事者の作業を支援する技術の開発が求められている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名東急建設
業種製造
地域東京都渋谷区(本社)
課題シールドトンネル工事における安全と品質を安定的に確保する技術を開発したい
解決の仕組みAI(人工知能)技術を用いてシールドマシンを制御するシステムを開発する
推進母体/体制東急建設、協立電機、Automagi
活用しているデータシールドマシンの掘進時に得られる計測データ
採用している製品/サービス/技術AI(人工知能)技術