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富田薬品、離島などの医療資源が乏しい地域に処方薬を配送する仕組みづくりに着手

DIGITAL X 編集部
2021年8月19日

医薬品販売の富田薬品は、鹿児島県内の離島を含めた医療資源が乏しい地域を対象に、住民へ遠隔で服薬を指導し処方薬を配送する仕組みを構築する。ゆうちょ銀行の決済サービスの活用を検討し、支払までをカバーする計画だ。2021年5月10日に発表した計画に対し、この仕組みのための情報連携基盤を構築する日立ソリューションズ西日本が、システム概要などを2021年7月30日に発表した。

 富田薬品が構築を進めているのは、離島など医療資源が乏しい地域の住民に対し、遠隔での服薬を指導から処方薬の配送、代金の支払いまでを完結できる仕組みと、それを実行するためのプラットフォームである(図1)。

図1:医療資源が乏しい地域における遠隔服薬指導・処方薬配送のためのサービスの内容と情報連携基盤の位置付け

 対象にする鹿児島県は、160万の人口のうち16万人が離島で暮らし、人が暮らす離島の数は26に及ぶ。一方で市内は人口集中率が高く、エリアによっては医療機関が少なく、医療の過疎化が課題になっている。

 富田薬品の計画では、医療過疎なエリアでは、医療機関を自由に選べる「フリーアクセス」を確保しつつ、増加する高齢者も利用できるデジタル化を推進する。同時に、台風や線状降水帯の襲来など頻発化する自然災害および新型コロナへの対策にも対応できるようにする。

 また、島民のほとんどがクレジットカードを持たないことから、ゆうちょ銀行の決済サービスの利用を検討する。配送についても日本郵便のサービス活用を検討する。処方箋原簿の薬局への配送は信書扱いのため原則、一般の宅配便が使用できないためだ。

 これらの仕組みの中核に位置するのが、情報連携基盤である。標準機能として、医療機関が保有する患者のカルテ情報および処方せん情報を調剤薬局に連携する機能を提供する。調剤薬局は、服薬情報や薬の発送情報を登録することで、薬剤師が不在の地域の住民に対し、服薬指導や薬の配送管理を担当する。

 オプション機能として、医療・介護・自治体などとの情報共有のための機能を用意する。電子お薬手帳や服薬指導、介護情報、バイタル情報、薬剤保管の在庫情報などを管理するシステムとの連携を可能にする。

 これら機能を利用することで自治体や団体は、(1)重複投与の防止と医療費削減、(2)処方薬在庫の適正化による在庫の削減と医療費の低減、(3)薬歴確認による緊急時の適切な医療提供、(4)災害避難時の生体認証による本人確認ができるようになる。

 同情報連携基盤の設計・構築を日立ソリューションズ西日本が担当する。患者と医療従事者の本人確認や、なりすましの防止、個人情報の保護などセキュリティ強度を高めるために、顔認証機能を備える公開型生体認証基盤「Public Biometric Infrastructure」(日立製作所製)を利用する。

 富田薬品/日立ソリューションズ西日本は、この情報連携基盤を鹿児島県以外の自治体や広域医療圏サービスの運営団体・企業などへの提供を検討している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名富田薬品
業種医療・健康
地域鹿児島県における離島を含む医療資源が乏しい地域
課題医療資源が乏しい地域の住民に処方薬を配送する仕組みをつくりたい
解決の仕組み調剤薬局と医療機関および処方薬の配送・決済を担当する企業などとの連携を可能にする情報連携基盤を構築する
推進母体/体制富田薬品、日立ソリューションズ西日本
活用しているデータ患者のカルテ情報、処方せん情報、電子お薬手帳、服薬情報、介護情報、バイタル情報、薬剤保管の在庫情報など
採用している製品/サービス/技術公開型生体認証基盤「Public Biometric Infrastructure」(日立製作所製)
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