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野菜生産のトップリバー、レタスの収穫日を目視とAIシステムとで予測

DIGITAL X 編集部
2021年9月22日

野菜の生産・販売を手掛けるトップリバーは、レタスの収穫日を予測するためにAI(人工知能)システムを2021年度から利用し始めた。担当者の経験と勘にAIシステムの予測値を加えることで、収穫日をより高い精度で予測しているという。システムを開発した日立ソリューションズ東日本が2021年9月10日に発表した。

 トップリバーは長野県北佐久郡を拠点に野菜を生産・販売する企業。同社の御代田農場および富士見農場では2021年度から、レタスの生産において、「AIを活用したレタス生育予測システム」を導入し利用している。従来の担当者による経験や目視による生育予測にAIシステムによる予測値を組み合わせることで、収穫日を非常に高い精度で予測できるようになったという。

 AIを活用したレタス生育予測システムは、生育日数の変化を学習し、レタスの生育日数を時期ごとに算出し生育を予測する(図1)。利用するデータは、ほ場の緯度・経度と標高、過去2年間の気象メッシュ情報(約1キロメートル四方の気象データ)と生育日数のデータだ。

図1:AIを活用した予測イメージ

 今回、同システムに時系列データの学習に適したLSTM(Long Short Term Memory)モデルを組み込むことで予測精度を高めている。2021年4月~6月の予測値の精度(収穫予測日と実際に収穫した日の差)は±1.9日だった。従来の経験則に基づく担当者による予測値は±3.1日である。

 同システムでは、定植日と生育予測による収穫予定日をガントチャート形式で一覧表示する(図2)。生産担当者はレタスの生育予測による出荷量の見通しを一目で把握できる。出荷量の見通しは、将来の出荷量の過不足を見通すことにもつながるとする。

図2:予測日と実績を表示するガントチャートの例

 トップリバーでは従来、過去の実績データを参考に、生産担当者が経験と勘で生育と収穫日を予測してきた。ただし、長い経験が必要なほか、毎年の気象条件の変動に左右されやすいという課題がある。他に、葉齢の測定など植物生理に基づいて生育を予測する方式もあるが、導入前後に専門家による調整が必要で導入の難易度が高いという。

 今回のシステムは、農林水産省の「スマート農業技術の開発・実証」プロジェクトの1つとして日立ソリューションズ東日本がトップリバーと共同で開発した。日立ソリューションズ東日本は今後、レタスなどの葉物野菜だけでなく、多品目・多品種に適用したい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名トップリバー
業種農林水産
地域長野県北佐久郡御代田町(御代田農場)、長野県諏訪郡富士見町(富士見農場)
課題経験と勘だけに頼ってきたレタスの収穫日の予測精度を高めたい
解決の仕組みレタスの生育を予測するAIシステムを開発し、生産担当者の収穫日予測を支援する
推進母体/体制トップリバー、日立ソリューションズ東日本
活用しているデータほ場の緯度・経度、標高、過去2年間の気象メッシュ情報(約1キロメートル四方の気象データ)、生育日数のデータなど
採用している製品/サービス/技術ディープラーニングのフレームワーク「TensorFlow」および「Keras Memory」、LSTM(Long Short Term Memory)モデル
稼働時期2021年度