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都立大、マイクロ物流や金属プレス用IoT基盤などローカル5G環境を使う5つの研究を開始

DIGITAL X 編集部
2021年10月15日

東京都立大学は、同校が持つ大規模なローカル5G(第5世代移動通信システム)環境を利用する研究として、2021年9月から新たに5つの研究を開始した。配送ロボットや金属プレス用IoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤などを対象にする。2021年10月5日に発表した。

 東京都立大学は、南大沢キャンパス(八王子市)と日野キャンパス(日野市)に、日本最大級とされるローカル5G(第5世代移動通信システム)の通信環境を持っている。この環境を使って2021年9月から新たに5つの研究を開始した。東京都の『未来の東京』戦略の一環で、Society5.0に向けた社会実装など、市民生活の向上に資するのが目的だ。

 都立大の研究は大きく(1)社会実装型(長期:最長5年間)、(2)社会実装型(短期:2~3年間)(3)挑戦型の3つに分かれている。

 社会実装型は、生活の質(QoL:Quality of Life)の向上につながる応用的研究で、長期では新たなライフスタイルの提案や社会的・公共的価値を創造。短期では、コロナ後の社会における新たな日常の確立や社会変革への道筋の提案などに取り組む。

 挑戦型は、企業が手を出しにくい将来の課題解決に資する基礎的研究であり、科学技術の発展や変革をもたらし得るとしている。

 2021年9月に始めた5つの研究の内訳は、社会実装型・長期が1件、同・短期と挑戦型が、それぞれ2件である。社会実装型・長期として取り組むのは、陳列棚や配送ロボットを含めたマイクロ物流のプラットフォームの構築だ(表1)。

表1:東京都立大学のローカル5G環境における社会実装型・長期の概要
テーマ代表教員研究内容期待できる成果
配送ロボットなどを用いたマイクロ物流の基盤構築和田 一義 准教授陳列棚と小型物流倉庫の機能を併せ持つ「マイクロ物流ノード」と、顧客やマイクロ物流ノードに商品を搬送する「配送ロボット」、全体を管理・制御する「エッジサーバー」などからなる基盤を開発・構築する売り場管理の自動化と、どんな人にも商品が届くバリアフリーな店舗の実現

 社会実装型・短期では、金属プレス加工用のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤と遠隔マルチワークのための代理身体システムに取り組む(表2)。

表2:東京都立大学のローカル5G環境における社会実装型・短期の概要
テーマ代表教員研究内容期待できる成果
金属プレス加工向けIoT基盤の構築楊 明 教授プレス機械や金型内蔵センサーなど複数のセンサーからのデータをローカル5Gで無線伝送し、実プレス加工におけるプロセスの可視化と制御に対する無線伝送特性の影響など実用性を評価する経験や勘に頼っていた異常検出や金型の摩耗予測などの自動化。製造過程における不良品発生率の減少や若手人材の育成
遠隔で複数の働きを可能にする代理身体システムの構築ヤェム ヴィボル 助教操作者の知覚と運動制御を等価的に持った代理身体を複数空間に展開するシステムを構築し、遠隔空間で複数種の動作を可能にする。そのために(1)多種代理身体ロボットの開発、(2)多感覚提示とデフォルト身体の構築、(3)空間情報の計測とモデリング、(4)遠隔での複数の働きの実験と評価を研究・開発する地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用

 挑戦型では、超実時間モニタリングのためのロボット知能化基盤と6Gに向けた測位技術基盤を研究する(表3)。

表3:東京都立大学のローカル5G環境における挑戦型研究の概要
テーマ代表教員研究内容期待できる成果
超実時間(超リアルタイム)モニタリングに向けたロボットの高度知能化基盤技術の確立久保田 直行 教授超実時間での(1)トラッキング(計測)と(2)モニタリング(認識・予測・推定)、および(3)オンライン機械学習と(4)オンラインロボット適応を研究・開発する1~2人乗りの小型車両「パーソナルモビリティ」や自動搬送車への展開、林業や建設業の現場の自動化や自律化
ミクロな領域からマクロな領域までの測位をカバーする測位技術の創出横山 昌平 准教授6Gに向けた高ダイナミックレンジの測位基盤技術を確立する。光に着目し、(1)カメラなどのセンサーデータを分散協調処理し、数センチメートル級の測位精度を達成する「フォトグラフィックGPS」と、(2)高精度光クロックの発信とその計測技術による数ミリメートル級の測位精度を達成する「フォトニックGPS」を研究・開発する高度ICT社会における交通や物流など大きな距離単位での観測・制御と、ロボットや医療分野におけるIoT機器のミリ単位での測位を一元的に扱える基盤