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日立、エネルギーマネジメントシステムの実証環境を共創拠点「協創の森」に構築

DIGITAL X 編集部
2021年10月19日
日立製作所の「協創の森」全景(左)と新研究棟「協創棟」

日立製作所は、エネルギーマネジメントシステムの実証環境を同社の研究開発拠点である「協創の森」に構築し、運用を開始した。同社が持つ発電や蓄電、設備保守などを組み合わせた環境を使い、CO2排出量とエネルギーコストのそれぞれを削減できる仕組みを顧客企業とともに検証・実現するのが目的だ。2021年10月8日に発表した。

 日立製作所が、同社の研究開発拠点である「協創の森」(東京都・国分寺市)に構築したのは、顧客とともに再生可能エネルギーの導入検証や新たなエネルギーソリューションを生み出すための実証環境。街区や工場、ビル、データセンターといった種々のエネルギー消費設備を有する多様な業界を想定しているという(図1)。

図1:日立製作所が「協創の森」に構築したエネルギーマネジメントシステムの実証環境の概要

 実証環境の運用開始に向け、エネルギーマネジメントシステムの効果を同社・国分寺サイトで検証した。結果、2018年度との比較で、CO2排出量を20%削減しながら、エネルギーコストを30%削減できることを確認したとしている。

 実証環境としては、直流型の分散グリッドに、電力の需給調整システムや発電設備の故障・寿命予測、および効率的な電力取引システムなどを組み合わせたもの。分散グリッドには、太陽光発電システムや蓄電池、ガスコジェネレーションシステム、EV(電気自動車)の急速充電器などが接続されている。

 発電設備の故障・寿命の予測では、太陽光発電や蓄電池の電力データを半導体モデルで解析し、細かな時間単位でエネルギーをデジタルデータに変換して発電設備を制御する。設備の状態をリアルタイムに管理することで故障や寿命を短時間で予測できるとしている。

 需給調整では、半導体モデルによる解析技術を使って、蓄電池による電力需給を調整する。蓄電池の充電状態を電圧に変換し、蓄電池電圧と直流バス電圧をリアルタイムに制御することで需給のマッチングを図る。

 これらの仕組みを使って、エネルギーの取引市場の動きを予測し、蓄電池やコジェネレーションシステムの運用計画を立案し、取引タイミングを見極めることでエネルギーコストの低減を図る。使用電力が100%再生可能エネルギーであることを証明するシステムも運用する。

 世界では、各国首脳が2050年のCO2排出実質ゼロを宣言し、2030年までの排出削減目標引き上げに取り組み始めている。エネルギーの需要家は、これまで以上に非化石エネルギーの導入が求められる。そこでは、コスト削減や頻発する災害時のレジリエンス性などにも考慮する必要がある。

 また日立によれば、エネルギーマネジメントシステムとしては、火力発電所などの大規模集中型電源と、再生可能エネルギーを中心とした分散型電源を調和させる仕組みの開発が進められてきたが、需要量や再エネの発電量の変動から生じる電力量インバランスの抑制が困難なことが、エネルギー需要家にとって課題になっている。