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阪神電鉄、踏切やホームでの危険検知や設備点検へのAIとローカル5G/地域BWAの利用を実証実験

DIGITAL X 編集部
2021年10月25日

阪神電気鉄道は、同社の阪神武庫川線において踏切やホームでの危険の検知と設備点検の両業務に対し、画像解析のAI技術や、ローカル5G(第5世代移動通信システム)と地域BWA(Broadband Wireless Access)を活用する実証実験を2021年10月25日から開始する。2021年10月18日に発表した。

 阪急阪神ホールディングスグループの阪神電気鉄道が取り組むのは、踏切やホームでの危険の検知と、架線設備の点検の両業務を対象に、画像解析のAI技術や、ローカル5G(第5世代移動通信システム)と地域BWA(Broadband Wireless Access)を活用する実証実験(図1)。先端技術を活用することで、さらなる安全性の追求と、よりコンパクトな鉄道運営の実現を目指す。

図1:実験イメージ

 実験は、阪神武庫川線の東鳴尾駅の踏切と武庫川駅のホーム、および営業運行中の車両内で、2021年10月25日から2022年2月末にかけて実施する。グループ企業のアイテック阪急阪神、ベイ・コミュニケーションズ、阪神ケーブルエンジニアリングが保有する技術やノウハウを持ち寄り、AI技術などの実用可能性を検証する(表1)。

表1:実証実験に参加するグループ各社の役割
会社名実験での役割
阪神電気鉄道実証実験全体の統括と鉄道業界における有効性の検証、実験場所の提供
アイテック阪急阪神各種AIシステムの開発と技術検証
ベイ・コミュニケーションズ地域BWA通信基盤の提供(武庫川線周辺エリアにおいて免許を取得済み)
阪神ケーブルエンジニアリングローカル5G通信基盤の構築と技術検証(2021年7月に免許を取得したSub6帯の実験試験局を使用)

 東鳴尾駅では踏切の危険検知を実証する。設置したカメラ画像から踏切内での人や自動車の立ち往生などをAI技術で検知する。武庫川駅ではホーム上の危険検知を実証する。カメラを設置し、利用客の発車直前の駆け込み乗車や発車直後の車両への接近、ホームからの転落などを検知する。

 踏切とホームで検知した危険内容は、ローカル5Gおよび地域BWAを通じて通知し、両者を比較検討することで最適な通信方式を検証する。ローカル5Gは実証実験局として武庫川線沿線を広くカバーしており、将来の鉄道環境に向けた広域利用を見据えて検証する。

 なお検知内容は実運用では司令員や乗務員にリアルタイムに通知することを想定している。ただし実証実験では、司令員や乗務員には直接通知せず、模擬環境下でのみ検証する。

 設備点検の実証では、実験参加車両前方にカメラを設置する。走行中に撮影する画像から、沿線になる各種設備の異常を検出することを目指す。実験では、そのためのAI解析モデルを構築する。

 今回の実験は基礎的な検証に位置付け、今後、既存システムとの連携や検証線区の拡大など実用化に向けた検証を進める。将来的には他の鉄道会社でも利用できるシステムとしての提供や、鉄道以外の用途への適用を目指す。

 阪神電鉄によれば、労働力人口の減少を背景に、乗務員や保守作業員などの確保が鉄道業界の課題になっている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名阪神電気鉄道
業種交通
地域兵庫県西宮市(東鳴尾駅、武庫川駅、阪神武庫川線沿線)
課題乗務員や保守作業員などの確保が難しくなるなかで、さらなる安全性の向上と、よりコンパクトな鉄道運営を実現したい
解決の仕組み踏切や駅ホームに設置したカメラ映像をAIで解析し人や自動車による危険行動を検知する。車両の前方に設置するカメラ映像から沿線の各種設備の異常状態を検出する
推進母体/体制阪神電気鉄道、アイテック阪急阪神、ベイ・コミュニケーションズ、阪神ケーブルエンジニアリング
活用しているデータ駅ホームや踏切に設置したカメラおよび車両前方に設置したカメラが撮影した映像
採用している製品/サービス/技術画像解析AI、ローカル5G、地域BWA(Broadband Wireless Access)
稼働時期2021年10月25日~2022年2月末日(実証実験の期間)