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凸版印刷、工場の環境保全に向けデータを自動収集するIoTシステムを構築

DIGITAL X 編集部
2021年11月5日

凸版印刷は自社工場における環境保全を目的に、環境データを自動収集するためのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を構築した。機能強化を図りながら、国内10工場への導入を進める。環境保全業務の負荷を軽減し、工場全体の対環境リスクのマネジメントを強化する。2021年10月26日に発表した。

 凸版印刷が構築したのは、工場における環境データを自動で収集するためのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)システム。工場排水の水位やpH値(水素イオン濃度)、ORP(酸化還元電位)などの情報を収集する(図1)。

図2:環境データ自動収集システムの導入により効率化される点検・保守業務イメージ

 IoTシステムの導入により、工場における環境保全業務の負荷を約20%軽減できると見込んでいる。軽減できた人的リソースは、能動的な環境保全活動へ割り当てることで、工場全体の環境リスクマネジメントを強化したい考えである。

 最初に導入を始めた工場では、1000以上ある点検項目のうち約10%をセンサーで収集している。2022年度中には、すべての環境データを自動で収集できるようにする計画だ。

 凸版のIoTシステムは、各種センサー機器と、センサーデータを扱うクラウド型プラットフォーム「ZETADRIVE」、およびデータ監視システムからなっている(図2)。

図2:凸版印刷の工場に構築された環境データ自動収集システム概念図

 今回、既存の測定器から出力されるデータをデジタル変換するデータ変換装置「ZETABOX」も開発した(図3)。導入コストの低減を図るとともに、測定器のメンテナンスなどの作業変更なしにデータを自動収集できるようにした。

図3:凸版印刷が自社開発した「ZETABOX」(左)とクラウド環境など

 センサーデータは、LPWA(Low Power Wide Area)通信規格の1つである「ZETA(ゼタ)」を活用したネットワークで収集する。工場では、内部構造が入り組んでいて電波が届きにくかったり電波の確保が難しかったりする場所が多い。ZETAネットワークを採用することで、死角のない通信網を構築したとしている。

 ほかにも、指針式のアナログメーターからデータを自動収集するうためのシステムの開発を進めている。

 凸版では今後、自社工場へのIoTシステムの導入を進めるとともに、データ監視システムを保有しているものの、環境データの収集に課題を抱えている顧客にも販売する。データ分析やレポート生成などを含めた商品化も検討する。

 同社によれば、製造現場における環境保全業務は、企業が果たすべき社会的責任である一方で、環境データの収集作業は人手に依存する部分が多い。製造現場では人的資源の確保が困難になっていることから、IoTシステムの導入が喫緊の課題になっている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名凸版印刷
業種製造
地域東京都文京区(本社)
課題製造現場における環境保全業務は企業の社会的責任である一方、環境データの収集は人手による部分が多く、人的資源の確保が困難になるなか、データ収集もままならない
解決の仕組みIoTシステムを導入し、環境データの収集を自動化する
推進母体/体制凸版印刷
活用しているデータ工場排水の水位やpH値(水素イオン濃度)、ORP(酸化還元電位)など工場における環境データ
採用している製品/サービス/技術ZETAネットワーク、クラウド型プラットフォーム「ZETADRIVE」、転送機器「ZETABOX」(いずれも凸版印刷製)
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