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神明ホールディングスら、輸送コストや食品ロスの削減に向け農産物の仮想市場を実証実験
米穀卸大手の神明ホールディングスはNTTなどと共同で、農産物の輸送コストや食品ロスの削減に向けた仮想市場の実証実験を開始した。農産物が実際の市場に運び込まれる前に取引することで「極力農産物を動かさない」仕組みを構築し、2024年頃の商用サービス化を目指す。2021年11月5日に発表した。
神明ホールディングスらが開始したのは、農産物の流通コストや食品ロスの削減を目的に、農産物のバリューチェーン全体を最適化に向けた仮想市場の実証実験(図1)。各種情報から需給を予測し、リアルな市場での実際の取引希望日の数日から1週間程度前に売買を設立させることで「極力農産物を動かさない」ようにする。輸送量全体の約35%の削減などを目指し、2024年ごろには商用化したい考えだ。海外展開も視野に入れる。
仮想市場は、実際の市場とのデジタルツインとして構築し、仮想の相対取引と仮想の競りを実施する。リアル空間で集めた情報をサイバー空間の仮想市場に渡し、サイバー空間上での予測や解析の結果をリアル空間にフィードバックする(図2)。
仮想の相対取引では、卸市場に集まる取引データや気象情報などによる生産予測に加え、種々の要因を加味した未来の予測に基づいて買い手と売り手を結びつける。例えば、突発的なイベントや市場間の価格変動、コロナ禍における消費動向の変化など、それぞれが複雑に絡み合う要素を取り込む。
仮想の競りでは、農産物の色や形・つや、糖度・酸度などを測定・数値化することで、バイヤーが農産物の良し悪しを遠隔地から判断し取引できるようにする。
予測情報は、トラック積載率と台数削減に加え、農産物の加工工場でも利用する。加工量に応じて必要な労働者を事前に確保するなど、労働面での効率化も期待する。
実験ではさらに、余剰農産物や規格外品の一般消費者とのマッチングにも取り組んだり、市場や加工工場で余った食品残渣を回収して堆肥を作り、農家に提供したりすることで、廃棄物の削減にも取り組む。
実験には、神明ホールディングスのほか、東果大阪と、NTT、NTT西日本、NTTアグリテクノロジーが参加する(図3)。仮想市場の構築・予測には、NTTのデジタルツインコンピューティング技術を用いる。
神明ホールディングスによれば、国産青果の約86%が卸市場を通過する市場流通で売買されている。一方で、市場流通にかかわるステークホルダーが情報を共有できておらず、大市場に農産物が集中することにおる価格の低下や余剰農産物の転送が生じ、追加の輸送コストが発生している。
企業/組織名 | 神明ホールディングス |
業種 | 流通・小売り |
地域 | 神戸市中央区(本社) |
課題 | 農産物の流通コストおよび温室効果ガス・食品ロスを削減したい |
解決の仕組み | 農産物が市場に運び込まれる前に取引を成立させる仕組みを構築し、農産物のバリューチェーン全体の最適化を図る |
推進母体/体制 | 神明ホールディングス、東果大阪、NTT、NTT西日本、NTTアグリテクノロジー |
活用しているデータ | 卸売市場に集まる取引データや気象情報など、突発的なイベントや市場間の価格変動、コロナ禍における消費動向の変化などの情報 |
採用している製品/サービス/技術 | デジタルツインコンピューティング(NTT製) |
稼働時期 | 2024年ごろ(商用化の計画時期) |