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キリンビール、ビール類の仕込み・酵母計画を自動化するAIシステムを全9工場で本格運用

DIGITAL X 編集部
2022年1月13日

キリンビールはビール類の製造工程における仕込みと発酵のための酵母計画を自動化するAI(人工知能)システムを、2022年1月から同社の全9工場で本格運用する。新システムにより年間1000時間以上の時間創出を見込む。システムはNTTデータと共同開発した。2021年11月29日に発表した。

 キリンビールが全9工場で稼働させるのは、ビール類の原材料を仕込み発酵させる工程での「仕込・酵母計画業務」を自動化するためのAI(人工知能)システム(図1)。2021年10月に試験運用を開始し、2022年1月から本格運用を開始する。システムはNTTデータと共同開発したもので、約1億7000万円を投じた。

図1:2022年1月に本番運用を始めた「仕込・酵母計画」システムの適用範囲

 新システムは、熟練者の知見を顕在化・標準化することで実現した。仕込・酵母計画業務の属人化を防とともに、熟練者が持つ技術の伝承を図る。同業務は、熟練者の知見に頼る複雑な作業で、担当者は様々な条件を勘案しながら計画を立ててきた。作業時間がかかるうえ、技術伝承が難しいことが課題だった。

 開発に向けてはまず、仕込・酵母計画業務に携わる各工場の熟練者にヒアリングし、同業務に関する様々な制約を洗い出した。そのうえで、制約条件を満たす解をコンピューターで見つけ出す技法である「制約プログラミング技術」を活用した。システムに業務要件とシステム要件の整理や、制約プログラミングエンジンの開発・チューニングはNTTデータが担当した。

 新システムの本格運用により全9工場合計で年間1000時間以上の時間創出を見込む。同社は2020年12月、濾過計画を自動化するシステムを稼働させている。今回の仕込・酵母計画へのシステム導入により、ビール類の醸造計画業務のすべてにAI技術を提供したことになる(図2)。両システム合計では、年間4000時間以上の時間創出を見込んでいる。

図2:2020年12月に稼働させた濾過計画のためのシステムと合わせて、ビールの醸造プロセス全体にAI技術を適用したことになる

 創出した時間は、さらなる品質向上に向けた取り組みや若手の育成など、人にしかできない価値創造のために利用する。“働きがい”を高めるための改革をさらに推進することで、品質管理レベルがより高い製造体制の確立を期待する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名キリンビール
業種製造
地域東京都中野区(本社)
課題ビール類の原材料を仕込み、発酵する工程での「仕込・酵母計画業務」の作業時間を短縮するとともに、同業務を行うために求められる熟練技術を伝承する仕組みを作りたい
解決の仕組み熟練者の知見を顕在化させ、仕込・酵母計画業務を標準化するとともに、計画立案作業をAIで自動化する
推進母体/体制キリンビール、NTTデータ
活用しているデータ製造計画や設備データなどの情報
採用している製品/サービス/技術制約プログラミング技術
稼働時期2022年1月(全9工場での本格運用開始時期)