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独メルク、半導体不足の解消に向け業界サプライチェーンのためのデータ分析基盤を構築へ
医薬・化学メーカーの独メルクは、半導体不足への対応を目的に、同業界のサプライチェーンを対象にしたデータ分析基盤を構築する。そのために企業向けOS(基本ソフトウェア)を開発する米Palantir Technologiesと提携した。情報共有を加速し、製品の市場投入までの時間短縮を図る。メルクのエレクトロニクス・ビジネスにおける日本法人メルクエレクトロニクスが2021年12月21日に発表した。
独メルクが構築する「Athinia」は、半導体業界におけるサプライチェーンを対象にしたデータ分析基盤(図1)。AI(人工知能)技術を使ったサプライチェーンに関係するデータの分析を可能にし、関係各社での情報共有を促すことで、製品の市場投入までの時間短縮を図り、半導体不足やサプライチェーンに関する課題の解決を図る。企業向けOSベンダーの米Palantir Technologiesとの提携により開発する。
メルクの経営執行委員兼エレクトロニクス・ビジネスCEO(最高経営責任者)であるカイ・ベックマン(Kai Beckmann)氏は、Athinia開発の意義をこう語る。
「半導体業界はかつてない課題に直面しています。半導体不足やサプライチェーン問題の解決には、透明性を持ってデータインテリジェンスを関係企業に提供する機密性の高いデータ連携プラットフォームの開発が不可欠です。(Athiniaにより)材料工学、データアナリティクス、セキュリティ分野におけるメルクとPalantir両社の知見と技術力を融合し、取引先企業の製造効率化による生産力の向上とイノベーションの加速を目指します」
Athiniaを利用する半導体メーカーや材料サプライヤーは、これまで個別に蓄積していたデータを関連企業と共有・集約し、サプライチェーンの最適化に向けたデータ分析が可能になる。生産性の向上に利用できるほか、半導体の製造工程を材料とプロセスの両面から、より深く分析・理解できるようになるという。
参加各社が提供するデータについては、コード化・匿名化された状態での共有を保証する。そのために各社は、目的に応じたアクセス制御を含め自社データの完全なコントロール権を持てるとしている。
Athiniaは、米Palantir Technologiesが開発する「Palantir Foundry」を使って構築する。異なるデータソースを統合し、データの構造化や分析を可能にする。機密データについては、データプライバシー規則に沿って確実に処理する機能を提供する。
メルクとPalantirは2017年から協業してきた。バイオメディカル分野で「Syntropy」プロジェクトを立ち上げ、がん治療の革新と研究の加速に向けたデータ活用に取り組んでいる。Syntropyは、研究者に直感的な分析技術を提供し、異なるソースからのデータの集約・分析・共有を可能にするのが目的だ。
企業/組織名 | 独メルク |
業種 | 製造 |
地域 | 独ダルムシュタット(本社) |
課題 | 半導体業界における半導体不足やサプライチェーンなどの課題を解決したい |
解決の仕組み | 半導体のサプライチェーンに参画する企業が、それぞれのデータを透明性と機密性を保ちながら共有し、サプライチェーンを最適化するためのデータ分析基盤を構築する |
推進母体/体制 | 独メルク、米Palantir Technologies |
活用しているデータ | 半導体のサプライチェーンに携わる関連企業が持つ各種データ |
採用している製品/サービス/技術 | 「Palantir Foundry」(米Palantir製) |
稼働時期 | 2021年12月7日(独メルクと米Palantir Technologiesのパートナーシップの締結日) |