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東京海上日動ら、貿易取引における債務不履行リスク低減に向け証券とデジタル通貨の同時交換を実証実験

DIGITAL X 編集部
2022年4月11日

東京海上日動火災保険らが、貿易取引で生じる債務不履行リスクを回避するために、電子船荷証券とデジタル通貨をブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って同時交換する実証実験を実施した。同時交換の仕組みが実用化されれば、世界初の取り組みになるという。2021年12月27日に発表した。

 貿易取引に関する実証実験に取り組んだのは、東京海上日動火災保険とNTTデータ、スタンデージ、トレードワルツの4社。貿易取引で生じる債務不履行リスクの回避や、貿易コストの低減を目的に、電子船荷証券(Bill of Lading:B/L)とデジタル通貨をブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って同時に交換できるかどうかを、2021年8月から同年12月にかけて検証した(図1)。結果を踏まえ2023年度中に事業化したい考えで、この仕組みが実用化されれば、世界初になるとする。

図1:実証実験では、ブロックチェーン技術を使い、輸出者の電子B/L(船荷証券)と輸入者のデジタル通貨/暗号資産の同時交換を可能にした

 貿易取引では、代金を支払い対象になる実際の貨物の代わりに船荷証券を使っている。輸出者と輸入者が離れていると、船荷証券と代金を同時に交換できないため、輸出入者のいずれかが債務不履行になるリスクが存在する。今回の実験では、船荷証券と代金をデジタル化し、ブロックチェーン技術を使って同時に交換する仕組みを検証した。

 同時交換により、(1)債務不履行リスクの回避、(2)貿易コストの低減、(3)中小企業の貿易取引の活発化、(4)貿易の平易化といった効果があるという。債権債務の同時履行によって貨物の所有移転が明確になるため、国際売買契約や法律上の問題解決にもつながるとしている。

 実験では、スタンデージが暗号資産の移転技術を、トレードワルツが船荷証券や保険証券、インボイスなどを電子化する貿易プラットフォーム「TradeWaltz」を、それぞれ提供した。両者の相互運用技術をNTTデータが提供した。ほかに、材料や部品の輸出入を手がける松尾産業や、中古車輸出などを手がけるウィル・ビーなども実験に参加・協力した。

 東京海上らによれば、国内外で近年、船荷証券の電子化に向けた法整備の動きがある。デジタル通貨についても、中国やカンボジアなどを中心にCBDC(中央銀行デジタル通貨)の実用化に向けた動きが活発化している。両者が今後、国際的に普及すれば双方を同時に交換できる可能性が生まれる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名東京海上日動火災保険
業種物流
地域東京都千代田区(本社)
課題貿易取引において、船荷証券と代金を同時に交換できないと債務不履行になるリスクがある
解決の仕組み船荷証券と代金の両者をデジタル化しブロックチェーン技術を使って同時に交換する
推進母体/体制東京海上日動火災保険、NTTデータ、スタンデージ、トレードワルツ
活用しているデータ船荷証券の記載内容など
採用している製品/サービス/技術暗号資産の移転技術(スタンデージ製)、電子貿易プラットフォーム「TradeWaltz」(トレードワルツ製)を
稼働時期2021年8月~2021年12月(実証実験の期間)