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日立、組み立て作業をARで支援するアプリの生産性が5G環境下で約40%向上

DIGITAL X 編集部
2022年9月12日

日立製作所は、組み立て作業をAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を使って支援するためのアプリケーションの生産性について、5G(第5世代移動体通信サービス)環境下で検証した。4G(LTE)環境に比べ生産性は約40%高まったとする。実験を実施したNTTドコモとともに2022年3月30日に発表した。

 日立製作所が実施したのは、社会インフラ分野における組み立て作業をAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を活用して支援するアプリケーション「AR組み立てナビ」の実証実験(図1)。5G(第5世代移動体通信サービス)専用の基地局とコアネットワークを用いたSA(スタンドアローン)方式の環境下で、同アプリが実用に耐えられるかを、2022年3月1日から同月29日にかけて検証した。

図1:「AR組み立てナビ」におけるAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を使った組み立て作業支援のイメージ

 AR組み立てナビは、組み立て作業において作業者が取るべき行動をプロジェクターで作業台に投影して指示するアプリケーション。現場の映像データをAI(人工知能)技術でリアルタイムに分析・判断し、指示を出す。大容量の映像データを扱うため、従来の4G(LTE)環境では安定した稼働が難しかった。

 今回の実証では、AR組み立てナビが前工程の作業完了を検知してから、次工程の作業指示を投影するまでの応答時間を測定した。応答時間は1.5秒で、組み立て業務に支障を与えない応答時間として設定していた3秒を下回った。複数の作業指示からなる工程全体では、LTE環境下の57秒が35秒に短縮でき、生産性が約40%高まった。

 AR組み立てナビは、ドコモが提供するエッジコンピューティングのためのクラウドサービス「docomo MEC(Multi-access Edge Computing)」(旧ドコモオープンイノベーションクラウド)上で稼働さ、組み立て作業は、日立の研究開発拠点「協創の森」に用意した実証環境で実施した。

 MECと組み立て作業の現場を5Gサービスで接続した(図2)。データは、SA方式のメイン回線と、5G基地局とLTEコアネットワークを用いるNSA(Non-Stand Alone)方式のバックアップ回線とで伝送した。5G回線を二重化したことなどで、主回線に遅延があった際も通信が途切れず、AR組み立てナビを安定的に稼働できたとしている。2回線で伝送するために、日立が開発した5G回線を2重化する技術「5Gハンドリングミドルウェア」を用いてパケットを複製した。

図2:実証実験におけるネットワークの構成イメージ

 両者によれば、製造業や鉄道・電力などの社会インフラ分野では、大容量や低遅延の通信が求められている。通信の遅延や障害により業務が停止すれば、復旧に時間がかかり、生産計画や設備保全などに影響を与えるためだ。高い信頼性や安定性の確立に向けたネットワークとして5Gが期待されている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日立製作所
業種製造
地域東京都国分寺市(協創施設「協創の森」)
課題組み立て作業をAR技術を使って支援するアプリケーション「AR組み立てナビ」がLATE環境では安定稼働しない
解決の仕組みエッジコンピューティング環境に5G(第5世代移動体通信サービス)を適用し、大容量データを高速・安定してやり取りできるようにする
推進母体/体制日立製作所、NTTドコモ
活用しているデータ作業現場の映像データ
採用している製品/サービス/技術組み立て作業支援アプリケーション「AR組み立てナビ」(日立製)、「5Gハンドリングミドルウェア」(日立製)、「docomo MEC」(NTTドコモ製)
稼働時期 2022年3月1日~同29日