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竹中工務店、建物の内部イメージと音響を同時にシミュレーションできる可搬型VRシステムを開発

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年2月28日

竹中工務店は、建物の内部イメージと音響性能をVR(Virtual Reality:仮想現実)技術を使って設計段階からシミュレーションできるシステムを開発した。建物の完成イメージとともに、音がどのように聞こえるかを事前に確認し、内装工事やレイアウトなどに活用する。2022年12月2日に発表した。

 竹中工務店が開発した「可搬型音場シミュレータ」は、建物の内部空間をVR(Virtual Reality:仮想現実)技術で再現し、同空間の音響性能を疑似体験できるシステム(図1)。建物内部で音がどう聞こえるかを設計段階から確認することで、コンサートホールや劇場など音響性能を重視する施設において、顧客が持つ完成イメージと要望される音響を可視化し、内装の仕上げやレイアウトに活用したい考えだ。

図1:「可搬型音場シミュレータ」の全体イメージ

 可搬型音場シミュレータは、(1)高臨場感可聴化システムと(2)動的可聴化システムからなる。高臨場感可聴化システムは、VRゴーグルを着用した人の頭の動きや向きを動作検出センサーで追跡し、その動作に沿った臨場感を提供するもの。建物内部のVR映像を見ながら、ヘッドフォンからシミュレーションによる音の鳴り方を確認できる。

 動的可聴化システムは、VR空間を移動した際に音の鳴り方の変化を確認するためのもの。PC画面上のVR空間を表示し、専用コントローラーを使って移動しながら、その場の音響をヘッドホンで聴く。移動や体の向きによる音響の変化や、マイクて拾った音がどのように返ってくるかを検証できる。

 竹中工務店はこれまでも、室内音場シミュレータ「STRADIA」と、建物内部をVRゴーグルで疑似体験できるVRシステムを個別に開発し、使用してきた。今回、STRADIAでさまざまな方向からの音をヘッドフォンで試聴可能にするとともに、VRシステムとの連携を図ることで、音響と内部イメージを重ねる形でのシミュレーションを可能にした(図2)。両者を組み合わせたのが可搬型音場シミュレータである。

図2:室内音場シミュレータ「STRADIA」による音響シミュレーションの概要
デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名竹中工務店
業種製造
地域大阪市中央区(本社)
課題コンサートホールや劇場など音響性能を重視する施設において、顧客が持つ完成イメージと要望にあった音響性能を実現したい
解決の仕組み室内音場シミュレーターとVRシステムを連携し、建物内部のイメージと音の聞こえ方、および移動による変化を設計段階から確認できるようにする
推進母体/体制竹中工務店
活用しているデータ建物の設計データ、音響を信号化したデータ
採用している製品/サービス/技術室内音場シミュレータ「STRADIA」(竹中工務店製)、建物内部のVRシステム(同)
稼働時期2022年12月2日(システム開発の発表日)