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シール材のバルカー、パッキンの寿命のセンシングなど工場設備の遠隔監視基盤を開発し外販

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年5月1日

産業設備用シール材のゴムパッキンなどを製造するバルカーは、パッキンの寿命をセンシングする仕組みや、設備の稼働状況を遠隔監視するための管理基盤を開発し、設備管理業務の支援サービスに乗り出す。シール材の販売だけでなくガス漏れのない設備保守に向けた管理サービスを事業化するのが目的だ。2023年4月24日に発表した。

 ゴムパッキンなどを製造するバルカーが開発した「MONiPLAT(モニプラット)」は、設備点検のためのクラウド型プラットフォーム。センシングと作業者による点検結果を一元管理することで、パッキン装着箇所のガス漏れを未然に防いだり、設備の遠隔監視や予防型保守を可能にする。同社取締役副社長でCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)の中澤 剛太 氏は「シール材の販売にとどまらず、工場の設備や建機などシール材の装着箇所からのガス漏れなどが発生しないようにメンテナンス領域の効率化を支援したい」と説明する(写真1)。

写真1:バルカー 取締役副社長 CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)の中澤 剛太 氏

 MONiPLATは、ガスケットやパッキンなど気密性を高めるシール材の状態をセンシングし予防型で保守するCBM(Condition Based Management:状態由来の管理)のための機能と、定期点検型のTBM(Time Based Management:時間由来の管理)のためのデータ収集・記録機能からなる(図1)。

図1:設備点検用プラットフォーム「MONiPLAT」のサービス概要

 CBMのための機能には、(1)機器の異常振動を検知するサービス「VHERME(ベルム)」、(2)油圧シリンダーのパッキン寿命をセンシングするサービスがある。後者は建設機械向けの「SealMote(シールモート)」と産業機器向けの「VALVESTA(バルベスタ)」とがある。

 センシングデータをAI(人工知能)技術で分析し、異常発生やメンテナンスの必要性を検知する。検知時には管理者にアラートメールで通知する。通常時は、設備のステータスやグラフをPC画面に表示するほか、部品の交換や設備の更新に関する履歴も管理できる。同社専務執行役員の瀧澤 利治 氏は、「CBMに向けては、設備の状態を現場で見極められるベテラン作業者の不足が課題になっており、そこをセンシングとデータ分析で補う」と話す(写真2)。

写真2:バルカー 専務執行役員の瀧澤 利治 氏

 一方のTBMのための機能は、スマートフォン用アプリケーションとして提供する(図2)。「紙やExcelを使った点検表では、入力の手間や非効率な管理方法が課題だが、そこを現場の若手が使い慣れたスマホで代替する」(滝澤氏)。「スマホ指向な設計にすることで、製造業のメンテナンス領域におけるスマートデバイスの普及を目指したい」(中澤氏)ともいう。

 スマホアプリでは、管理したい項目を事前に設定したうえで、現場担当者が巡回点検し、結果を入力する(図2)。点検結果を管理者はPC上で閲覧できるほか、点検業務の承認ワークフローと承認状況を把握できる。点検記録から報告書を作成・提出したり、未報告の点検リストを作成したりできる。今後の点検スケジュールを管理するカレンダー機能もある。

図2:点検業務用スマートフォン用アプリケーションでの入力イメージ。項目チェックのほか、任意の数値入力や画像の投稿ができる

 今後は、アナログメーターが示す数値を、スマホカメラで撮影したメーター画像を解析しデータとして記録する機能を2023年夏ごろに追加する予定だ。設備点検業務における手入力をさらに省いていく。

 MONiPLATは、AI関連スタートアップのRidge-i(リッジアイ)との協業で開発した。バルカーは事業検討と、ROI(Return On Investment:投資利益率)の設計・検証など、Ridge-iは技術調査やAIモデルの策定などを、それぞれ実施した。

 MONiPLATの利用料金は、初期費用は無料で、利用料も管理対象になるプレス機やポンプなどの設備台数が20台までは無料である。21台目からは台数ベースの従量課金になる。スマホアプリや管理ツールなどを使う管理者や現場作業員の数に制限はない。

 20台までを無料にした理由を中澤氏は、「当社製品はあらゆるところに装着されており、顧客の利用状況に合わせてメンテナンスサービスの仕組みを作るには開発費がかかり、導入までの期間も長くなる。最初のハードルを下げ、まずはプラットフォームを現場に広めたいからだ」と説明する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名バルカー
業種製造
地域東京都品川区(本社)
課題主要製品であるシール材の販売だけでなく、シール材の提供価値であるガス漏れをなくし顧客の生産に寄与したい
解決の仕組み油圧シリンダーの状態をセンシングし遠隔監視したり、設備点検業務の効率を高めるスマートフォン用アプリケーションを提供することで、各種設備の予防保守を可能にしメンテナンス業務の効率を高める
推進母体/体制バルカー、Ridge-i
活用しているデータ機器の振動データ、油圧シリンダー用パッキンのセンシングデータ、従業員が巡回で取得する設備点検データなど
採用している製品/サービス/技術設備点検プラットフォーム「MONiPLAT」、振動検知サービス「VHERME」、油圧シリンダーのパッキン寿命検知するサービス「SealMote」と「VALVESTA」(いずれもバルカー製)
稼働時期2023年4月25日(サービス提供開始日)