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横浜市、心疾患患者の自己リハビリを支援するモデル事業を開始

DIGITAL X 編集部
2023年6月27日

横浜市が、心疾患患者がスポーツ施設や自宅周辺など好きな場所で自身がリハビリに取り組むこと支援するモデル事業に取り組んでいる。個々人に合ったリハビリの内容を提示するスマホアプリを使うことで、日常生活内で運動を継続できるようするのが目的だ。2023年5月10日に発表した。

 横浜市が取り組んでいるのは、心筋梗塞など心疾患を患った患者が、再発や再入院を防止するための運動療法の支援策の検証だ。NTTグループが提供するリハビリ支援サービス「みえるリハビリ」を使って、患者に市内のスポーツ施設などを使ったリハビリを継続できるよう行動変容を促す。昭和大学の藤が丘リハビリテーション病院に通院する心疾患患者のうち参加基準に該当する20人程度を対象に、2023年5月から2024年3月まで実施する。

図1:心疾患患者が自発的にリハビリに取り組めるよう支援するモデル事業のイメージ

 みえるリハビリは、対象者に着衣型ウェアラブルデバイスを身に付けてもらうことで運動内容などを測定・可視化するサービス。専用のスマートフォン用アプリケーションからは、リハビリ強化指定病院が発行するリハビリ用の運動処方せんに記載の「運動の強さ(METs)」を確認できるため、患者がスポーツ施設や自宅周辺など好きな場所で処方された運動に自ら取り組むことを期待する。

 患者はまず同アプリを使って1週間の運動目標時間を設定する。ウェアラブルデバイスを着けて運動すれば、その内容から、目標の達成状況に応じたフィードバックメッセージが受け取れる(図2)。アプリには行動経済学に基づき、目標の達成状況に応じたポイントの付与やレベルの表示、ウォークラリーといったお楽しみ機能、家族や友人と運動状況を共有する「サポーター登録」など、行動変容を促す仕組みも用意する。

図2:「みえるリハビリ」のスマートフォン用アプリケーションが提供する機能の例

 アプリの開発には、NTTコミュニケーションズが持つデザインスタジオ「KOEL」が参画した。運動習慣の獲得に必要なユーザーリサーチや体験を設計し、参加者の多くを占める高齢者も使いやすいユーザーインタフェースを実装したという。

 心疾患は日本人の死亡原因として第2位に位置する疾患だ。再発・再入院の防止策の1つとして、運動療法や学習活動・生活指導、カウンセリングなどを総合的に実施する「心臓リハビリテーション」が保険診療で実施されている。ただ外来での心臓リハビリは、施設が自宅近くになく通院が困難という理由から、実施率は約7%にとどまっている。横浜市は、心疾患患者が地域や在宅でのリハビリを継続できる仕組みを提供することで、市民の健康寿命延伸に貢献したいと考えている(図3)。

図3:心臓リハビリテーションに向けた「横浜モデル」の概要

 今後は、モデル事業に参加した患者の運動目標の達成状況や行動変容アプローチを評価し、市の医療政策におけるデジタル技術の活用を検討していく。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名横浜市
業種公共
地域横浜市
課題心疾患の再発・再入院の予防に効果があるとされる心臓リハビリテーションだが、実施施設が自宅近くにないことを理由に外来での実施率が約7%と低い
解決の仕組み心疾患患者が地域のスポーツ施設や自宅周辺など好きな場所で自らリハビリに取り組めるよう運動内容の確認や運動状況をウェアラブルデバイスなどを使って可視化し、行動変容をうながす
推進母体/体制横浜市、NTTコミュニケーションズやNTTデータ経営研究所などのNTTグループ
活用しているデータ着衣型ウェアラブルデバイスで取得する運動状況、歩数、心臓リハビリテーション強化指定病院が発行する運動処方せんに記載の「運動の強さ」など
採用している製品/サービス/技術リハビリ支援サービス「みえるリハビリ」(NTTグループ製)
稼働時期2023年5月~2024年3月(モデル事業の実施期間)