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三菱電機、出口の見えない“PoC疲れ”をソラコムとの共創で脱却図る

DXプロジェクトの立ち上げ支援サービス「SORACOM Booster Pack」の価値

2023年4月18日

高品質な製品を確実に届ける−−。そんな企業文化を持つ日本の製造業は少なくない。三菱電機もその1社。だが、不確実性が高まる時代にあっては顧客の側も完成基準を定め切れない状況が増え、製品開発のためのPoC(Proof of Concept:概念実証)がいつまでも次のステップに進めないケースが増えていた。そうした壁を三菱電機は、ソラコムのDXプロジェクト立ち上げ支援サービス「SORACOM Booster Pack」を活用して打開しようとしている。(文中敬称略)

 三菱電機の研究開発部門の1つである「設計システム技術センター」は、全国の工場における種々の製品の立ち上げに携わり、製品そのものと、それを生産するための仕組みの開発を技術的な側面から支援する。近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが本格化したことで、顧客企業のDXを支えるための製品開発と、三菱電機自身のDX支援の2つの側面での役割が強まっている。

 設計システム技術センター ソフトウエア技術推進部 設計基盤技術グループの古賀 陽一郎 氏は、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)系のシステム開発や、各種ソフトウェアのアジャイル開発に対する支援ニーズが高まっています」と話す。顧客企業におけるDXへの取り組みも本格化し、DX関連プロジェクトとしてPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施するケースが増えていた。

写真1:三菱電機 設計システム技術センター ソフトウエア技術推進部 設計基盤技術グループの古賀 陽一郎 氏

PoCに従来のウォーターフォール型の考え方を持ち込んでいた

 ただPoCに対しては、PoCだけが繰り返され実導入など次の段階になかなか進めないなどで「PoC疲れ」といった流行語までが生まれてもいる。三菱電機においても、同じような状況にあった。

 その理由を古賀氏は、「PoCの進め方について全社的なコンセンサスがなく、手法が確立できないままに、従来の製品開発と同じウォーターフォール型で取り組んでいました。加えて当社の製品開発では高い品質の確保に強いこだわりがあります。PoCに対しても評価が厳しくなり、PoCから先に進めなくなっていました」と説明する。

 同センター ソフトウェア技術推進部 システムソフトウェア開発技術グループの升野 哲志 氏も、「IoTとクラウドを組み合わせたサービスの開発に携わった際も、さまざまに寄せられる品質要求などのすべてに対応していくなかで、当初のトライアル的な要素が薄れていってしまいました。PoC本来の姿であるスモールスタートで効果を見るアプローチの必要性を強く感じました」と、当時を振り返る。

写真2:三菱電機 設計システム技術センター ソフトウェア技術推進部 システムソフトウェア開発技術グループの升野 哲志 氏

 折しも、顧客企業がDXの一環でスマートファクトリーの実現に取り組むケースが増え、そのための製品開発ニーズも高まっていた。だが、スマートファクトリーで目指す姿や、そこで求められる機能はさまざまで、かつ「顧客自身も試行錯誤の段階にあり、製品の仕様を確定できない」(古賀氏)のが実状である。ウォーターフォール型に代わる開発手法の確立が必要だった。

 そこで設計システム技術センターから製品開発の主体である工場に対し、ウォーターフォール型からアジャイル型への切り替えや、DX時代の製品開発に向けた発想転換などの必要性を説明し、PoCのための手法の確立を提案した。その想いは現場も同じ。PoCのための確立された手法が必要との声が寄せられた。