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清水建設、エネルギー消費ゼロを目指すビルの設計案を抽出するAI技術を開発

DIGITAL X 編集部
2023年9月7日

清水建設は、顧客ニーズに沿いながらビルのエネルギー消費量をゼロにする設計案を絞り込むためのAI(人工知能)技術を開発した。「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」への関心が高まる中、ZEBの設計業務の効率化と高度化を進めることで、2024年4月からの時間外労働の上限規制適用に備える。2023年8月21日に発表した。

 清水建設の「ZEB SEEKER」は、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の設計案を絞り込むためのAI(人工知能)技術(図1)。顧客ニーズに沿った室内環境などを実現しながらビル全体でのエネルギー消費量ゼロを目指せるよう、建物のエネルギー性能に係る設計プロセスと各種設備機器の能力の決定プロセスを学習させた。顧客が、脱炭素への取り組み方針や事業計画の方向性を決める初期段階からニーズに合ったZEBの提案が可能になるという。

図1:清水建設が開発した「ZEB SEEKER」の位置付け

 ZEB SEEKERは、種々の入力情報を元に、50項目を超える設備機器の能力設計や建物の省エネルギー性能の評価を実行し最適化を図る。そこでの設計案は数億通り以上の組み合わせが考えられるが、その中から顧客ニーズに適した設計案に絞り込む。

 例えば、約150床の大型病院に対し、建物の消費エネルギー量を50%以下にする「ZEB Ready」の提案では、メンテナンス重視、ランニングコスト重視、快適性重視の3つの案を3日間で設計・提案できたという。

 入力情報には次のような項目がある。建物の簡易3D(3次元)データ、可変要素となる窓ガラスの種類や断熱性能などの建築仕様、空調方式や熱源の種別、照明・換気・給湯・昇降機・創エネなどの各種設備の仕様、それら建築・設備仕様に対する建築・運用コスト、使い勝手などの顧客ニーズ、目標とする省エネルギー率などだ。

 ZEBの実現には、その設計に高度なノウハウと多くの人手が必要になる。清水建設の場合、設計者によるZEB化の検討に1カ月以上を要しているという。加えて、計画の初期段階では顧客ニーズや仕様が頻繁に変更され、設計案の検討は敬遠されがち。提案するにしても設備の仕様検討が非常に複雑で手間がかかることがネックになっている。

 一方で、カーボンニュートラルに向けZEBへの関心が高まり、提案ニーズが増え、設計者の業務量が増加している。清水建設は今後、ZEB SEEKERを社内で展開して設計者の業務効率を高め、時間外労働の上限規制適用に対応するとともに、ZEBの提案内容を高度化し顧客満足度を高めたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名清水建設
業種製造
地域東京都中央区(本社)
課題カーボンニュートラルに向けたZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の提案が求められる案件が増える一方で、ZEBの設計業務には高度なノウハウと多くの人手が必要なため提案のネックになっている
解決の仕組みビルの仕様を決める入力データからZEBの設計案を作成し、顧客ニーズに合った案に絞り込むAI(人工知能)技術を開発する
推進母体/体制清水建設
活用しているデータ建物の簡易3Dデータ、可変要素となる窓ガラスの種類や断熱性能などの建築仕様、空調方式や熱源の種別、照明・換気・給湯・昇降機・創エネなどの設備仕様、それら建築・設備の仕様に対する建築コストやランニングコスト、使い勝手などの顧客ニーズ、目標とする省エネルギー率
採用している製品/サービス/技術ZEBの設計案を絞り込むためのAI技術「ZEB SEEKER」(清水建設製)
稼働時期――