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清水建設、施工建物を遠隔から検査するためのメタバースを開発

DIGITAL X 編集部
2024年3月7日

清水建設は、建物の中間検査や完了検査を遠隔地から実施するためのメタバースを開発した。建物の3D(3次元)スキャンモデルを再現し、設計図面との整合性を確認する。実地検査のための移動時間を短縮し業務効率を高めたい考え。2024年2月6日に発表した。

 清水建設が開発したのは、建物の着工から完成まで間に設計者が実施する建築確認を遠隔地から実施するためのメタバース(3次元の仮想空間)。建物の3D(3次元)スキャンモデルを再現し図面との整合性を確認する(図1)。同社では毎年、60万棟近くの建築確認を実施しており、完了検査だけでも検査員の移動時間は100万時間におよぶ。これを遠隔検査により削減する。

図1:メタバース検査システムの概要

 同社は、遠隔検査のためにこれまで、AR(Augment Reality:拡張現実)技術とタブレットを用いるシステムを開発してきた。だが検査員の視野に制約が生じるという課題があった。今回の仕組みでは、俯瞰視点などを再現できるため、検査の高度化も期待する。

 検査員は、VR(Virtual Reality:仮想現実)ゴーグルと手元のコントローラーを使って、メタバースに再現された建物の内部や周囲などを検査する。検査員はアバターとして表示され、別の場所からの参加者とも、音声で会話したり、工程写真や検査報告書などをクラウドから呼び出したりしながら、関係者間での合意形成を図る。

 メタバース上に再現する現地の建物3Dモデルは、内部空間をレーザースキャナーなどで点群データとして作成する。それを設計BIM(Building Modeling Information:建物モデリング)データと結合し、設計どおりの進捗であるかの整合性を検証する。整合性確認には、チェックツール「xRチェッカー」を使い、設定した許容値を超えている差分部分を色分けするなどで注意喚起する。

 メタバースは、建築向けCG(コンピューターグラフィックス)作成を手掛ける積木製作とで開発した。3Dモデルの出力にはゲームエンジンの「Unity」(米ユニティ・テクノロジーズ製)を使っている。

 開発にあたっては、建築基準法に基づく技術的評価を手掛ける日本建築センター(BCJ)の指導を受けた。実際の建物を対象にシステムを検証し「実用可能」との判断を得たという。将来的には、この仕組みを一般にも公開する予定である。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名清水建設
業種製造
地域東京都中央区(本社)
課題建物の実地検査では検査員が現地に赴くため、移動時間が業務を圧迫している
解決の仕組み建物の内部空間を点群データとしてスキャンし、メタバースに再現し、それと設計BIMデータとの整合性をチェックすることで検査し、関係者間の合意形成を図る
推進母体/体制清水建設、積木製作、日本建築センター、米ユニティ・テクノロジーズ
活用しているデータ3次元設計BIMデータ、建物の3次元点群データ
採用している製品/サービス/技術整合性チェックツール「xRチェッカー」、ゲームエンジン「Unity」(米ユニティ・テクノロジーズ製)
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