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線路管理の日本線路技術、設備不良を画像から判定するAIを開発

DIGITAL X 編集部
2024年3月12日

線路設備の保全業務を手掛ける日本線路技術は、線路設備の機能不全や異常を画像データから判定するAIをAI開発のLaboro.AI(ラボロ エーアイ)と開発し、実運用を始めている。線路設備の状態を鉄道車両の床下に設置したカメラで撮影する装置を導入したものの、撮影画像の枚数が大量になり検査員による判定に時間がかかっていた。2024年2月26日に発表した。

 日本線路技術が開発した「線路設備不良判定AI」は、線路設備の機能不全や異常を線路の状態を撮影した画像から判定するためのAI(人工知能)。画像から明らかに分かる不良をAIでスクリーニング判定し、そこで除外された判断が難しいケースのみを目視で最終判定する(図1)。目視のみに対し1カ月あたり100時間の検査工数の削減を見込む。2023年11月に実運用を開始した。

図1:「線路設備不良判定AI」は検査員による目視判定を自動化する

 線路の保全管理には、(1)検査、(2)不良判定、(3)修繕計画作成、(4)修繕の4段階がある。線路設備不良判定AIの導入により、(2)不良判定を自動化し、業務効率を高めながら設備の品質を維持できるようにする。

 判定対象は、ボルト、マクラギ、締結装置、軌道パッドなどの部材。ボルトであれば、脱落や緩み、破損などを判定する(図2)。これら部材は、設置場所や用途により製造元や構造、素材が異なるため、判定する以上のパターンや判定基準が変わってくる。現時点の判定精度は最高8割程度だとしている。

図2:「線路設備不良判定AI」における判定の流れ

 同社はこれまで、検査業務の効率を高めるために「線路設備モニタリング装置」を開発し導入してきた。鉄道車両の床下にカメラを設置し、営業走行中に線路設備の状態を撮影する仕組みだ。撮影する画像データ量は約6600キロメートル分にも及ぶ。検査員の現地派遣は削減できたものの、画像のチェックと異常判定は検査員が目視で実施していたため、大量画像からの判定にかかる時間の削減が課題だった。

 AIは、AIシステムの開発・構築を支援するLaboro.AIとで開発した。両社は今後、判定精度を高めるための技術開発に取り組むほか、MLOps(Machine Learning Operations:機械学習における開発と運用の融合)を実現するための体制を構築していくという。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日本線路技術
業種交通
地域東京都足立区
課題線路設備の状態を営業走行中の鉄道車両の床下に設置したカメラで撮影する仕組みを導入し現地派遣を削減したものの、画像からの不良判定は検査員が目視で実施するため、大量の画像データが収集できても、その判定が追いつかない
解決の仕組み画像から設備を検出し不良を自動判定するAIを開発する。精度が高まるまでは、AIで判定が難しい画像は検査員が目視で判定する
推進母体/体制日本線路技術、Laboro.AI
活用しているデータ営業走行中の鉄道車両に設置したカメラで撮影した軌道の画像データ
採用している製品/サービス/技術「線路設備不良判定AI」(日本線路技術とLaboro.AIとで開発)
稼働時期2023年11月(実運用開始時期)