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キリンビバレッジ、自販機の商品補充業務の時短と売上拡大に向け巡回ルートや陳列計画をAIで作成

DIGITAL X 編集部
2024年4月5日

キリングループで清涼飲料を製造・販売するキリンビバレッジは、自動販売機のメンテナンスや商品補充にかかかる業務時間を削減しながら売上拡大を図るために、巡回ルートや商品の陳列計画をAI(人工知能)技術で作成するシステムを開発した。2024年10月から本格導入する。2024年3月12日に発表した。

 清涼飲料メーカーのキリンビバレッジが開発したのは、自動販売機のメンテナンスや商品補充を担当する補充員の巡回ルートや商品の陳列計画などを生成するためのAI(人工知能)システム(図1)。業務負荷の1割削減と在庫量の最適化により売り上げを約5%高めるのが目的だ。廃棄ロスや品切れ、非効率な巡回を減らしCO2(二酸化炭素)排出量の削減にもつなげる。

図1:キリンビバレッジが自販機の巡業務の効率を高めるために導入するシステムの概要

 2024年10月から本格導入を始め、2025年9月末までにグループ会社が運営する全国約8万台の自販機を対象にする。導入に先立ち、2022年12月から2023年1月までに約2000台の自販機を対象に事前検証を実施。現場での有効性を確認済みだという。

 AIシステムで作成するのは、(1)巡回・積載計画と、(2)棚割り(自販機での商品の陳列順序)の2つ。加えて、自販機の在庫数や故障検知など遠隔管理の機能も用意する。これまで、巡回計画や補充数、棚割りは担当者個人の経験に頼るところが大きく属人化していた。

 巡回・積載計画は、在庫情報や巡回コストなどのデータから、品切れによる販売機会の損失を予防しながら移動時間を最小にできる計画を作成する。巡回計画は、補充員が持つ専用のスマートフォン用アプリケーションに表示するほか、管理者がPC上で確認する(図2)。

図2:巡回員が使用する専用のスマートフォン用アプリケーションの画面例

 棚割りでは、利益を最大化する棚割り案を作成する。過去の売上データに基づく需要予測に、商品の入れ替えや巡回に必要な人件費・物流費などのコストを加味し分析する。作成後は、棚割りと作業指示を補充員に提示する。

図3:棚割案は需要予測と巡回・補充にかかるコストを加味し、利益が最大になるように作成する

 AIシステムには、自販機オペレーションの最適化サービス「Vendy」(ソフトバンク製)を採用している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名キリンビバレッジ
業種流通・小売り
地域東京都中野区(本社)
課題自販機のメンテナンスや商品補充を担当する巡回員の業務が属人化しており、人手不足により上手くオペレーションを回せなくなってきた。商品の品ぞろえや補充不足などが起これば販売機会の損失につながる
解決の仕組み商品補充のための最適な巡回ルートや商品の棚割などをAI技術を使った作成し、利益率を高めるとともに、無駄な巡回によるCO2の排出量を減らす
推進母体/体制キリンビバレッジ、ソフトバンク
活用しているデータ自販機の売上データや在庫データ、自販機のステータスや位置情報、巡回コストの情報など
採用している製品/サービス/技術自販機オペレーション最適化システム「Vendy」(ソフトバンク製)
稼働時期2024年10月(本番導入開始時期)