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シール材のバルカー、SaaS事業を拡大し半導体装置メーカー向けサービスを開始
産業設備用シール材などを製造するバルカーが、SaaS(Software as a Service)事業の拡大を図っている。2023年3月に開始した産業用設備・機械の点検サービスに続け、新たに半導体装置メーカー向けサービスを2024年3月に開始した。2023年6月にはデジタル戦略本部を立ち上げており、SaaS事業を加速したい考えだ。2024年3月5日に発表した。
「モノ売りのデジタル化を進めるためにSaaS(Software as a Service)事業の拡大を図る。半導体装置メーカー向けの新サービスでは、樹脂加工セクターでリーダー的地位を確立したい。樹脂加工領域に当社は70年、取り組んでおり、素材加工のパートナー企業との連携網と、特殊素材の供給などで得られたデータと知見を生かす」――。バルカー 取締役副社長でCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)でもある中澤 剛太 氏は、SaaS事業への意気込みをこう語る(写真1)。
バルカーの事業の中核は、産業用設備や機械のためのフッ素樹脂や高機能ゴムを使ったシール材の製造。並行して、耐薬品性や耐熱性の高いフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを半導体装置メーカーに供給している。
シール材事業では、「ハードウェアにとらわれず『ガス漏れを起こさない』という安全そのものを貢献価値にしていく」(中澤氏)という観点から2023年3月、産業用設備のための点検機能を提供するSaaS(Software as a Service)「MONiPLAT(モニプラット)」を投入した。パッキンのセンシングや日常点検の効率化により、CBM(Condition Based Management:状態基準保全)/TBM(Time Based Management:時間基準保全)による点検・保守を支援する。
今回、半導体装置用樹脂製品の分野でも、半導体装置メーカーを対象にしたSaaS「Quick Value(クイックバリュー)」の提供を2024年3月5日に開始した。樹脂部品の発注・調達を対象にしたサービスで、装置メーカーの調達部門における見積もり依頼業務と、加工業者の見積もり作成業務とをカバーする。
Quick Valueの価値について中澤氏は、「製造業におけるBtoB(企業対企業)取引の3割は、2030年頃には人手を介さない自動見積もりが浸透すると見ている。自動化により相対的に小規模な注文も受けられるようになれば、新たな顧客を取り込める」と説明する。
バルカーの常務執行役員 高機能樹脂・製品本部 本部長の神田 大輔 氏も、「見積もり依頼を受けた加工業者は、サイズや材料費、加工の段取り、加工時間を踏まえて価格と納期を提示している。必要な情報を集めるために通常、2〜3日を要しているのが通例だが、受注できなければ、その工数が無駄になる。自動化により、そうした負担を軽減できる」と話す(写真2)。