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オリックス銀行、デジタル戦略の一環で事業部門が主導しスマホアプリを内製化

齋藤 公二
2024年4月30日

オリックス銀行が、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、事業部門が主導するアジャイル開発への取り組みに本腰を入れている。その成果の第1弾として、同行初となるスマートフォン用アプリケーションを開発し、2023年12月にリリースした。今後も内製化を推進するとともに、今回のアプリケーション開発で得た知見やノウハウを生かし、社内のDX人材の育成も加速させたい考えだ。

 オリックス銀行が2023年12月にリリースした「オリックス銀行アプリ」は、同行初の公式スマートフォン用アプリケーションである(図1)。インターネットバンキング用の「eダイレクト預金口座」を持つ顧客は、同アプリを使った残高確認や取引明細の確認などができるほか、口座を持っていない利用者も、資産運用や相続、マネーライフなどに関する種々の読み物を閲覧できる。

図1:「オリックス銀行アプリ」の画面例

 顧客に対し同行はこれまで、ログイン時に2要素認証などの機能を提供する「スマートフォン認証サービス」を提供してきたものの、銀行取引をスマホだけで完結できるアプリは用意していなかった。ネット銀行でありながらも主力商品が、定期預金や信託、投資用不動産ローンなど長期的な取引を対象にしたもので、日常的に入出金を繰り返す決済機能を提供していないためである。

デジタル戦略を掲げデジタルな生活動線でのポジションを高める

 それでも今回、スマホアプリを投入した理由を、この開発プロジェクトを主導したコーポレート・コミュニケーション部 コミュニケーション戦略チーム 主任 京野 紗季 氏は、こう説明する。

 「多くの金融サービスがスマホ対応を進める中、当行のお客様が他行のサービスを組み合わせて利用する際、他行はアプリで完結できるのに、当行はブラウザを使わなければならないケースが増え、当行にもスマホアプリを求める声が増えていた。業界トレンドとしてもアプリを持たない金融機関のほうが少ないだけに、顧客の利便性向上とトレンドに合ったサービス提供の両面からスマホアプリの開発をスタートさせた」

写真1:コーポレート・コミュニケーション部 コミュニケーション戦略チーム 主任の京野 紗季 氏(右)とデジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム マネージャーの梶本 麻実 氏

 もちろん、その背景にはオリックス銀行のIT・デジタル戦略がある。同行は中期的な経営戦略におけるデジタル戦略として、ビジネスモデルの変革と新しい付加価値の提供を目指している。そのためにCX(Customer eXperience:顧客体験)とEX(Employee eXperience:従業員体験)の向上を図る。オリックス銀行アプリはCX向上策の位置付けだ。

 オリックス銀行におけるDX人材育成を束ねる総務人事部長の長木 仁伸 氏は、「銀行と顧客の関係性が変わってきている。従来は、自宅から駅までや勤務先など物理的な生活導線の中に銀行はあった。それが今は、デジタルな生活導線の中に銀行のサービスが利用されている。当行のような店舗も決済機能も持たない銀行も生活動線に入れる環境になってきた。スマホアプリは、デジタルな生活導線におけるプラットフォームの1つであり、当行のポジショニングを高められると考えている」と説明する。

写真2:総務人事部長の長木 仁伸 氏(左)と総務人事部 人材開発チーム長の清原 麻美子 氏

 総務人事部 人材開発チーム長の清原 麻美子 氏も、「世の中でスタンダードになっているスマホアプリを提供できていないことは、新規顧客を取り込むための導線がないだけでなく、既存顧客の流出にもつながりかねない。まずは必須のタッチポイントとしてスマホアプリを提供し、そのうえで新しい価値の提供を目指していく」と話す。