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イオンリテール、発注量や価格を決めるAIシステムの導入部門を拡大

DIGITAL X 編集部
2024年5月30日

イオンリテールは2024年5月から、発注量や販売価格をAI(人工知能)技術を使って算出するシステムの導入部門を順次拡大する。食品廃棄ロスおよび店舗スタッフの教育と業務時間の削減につなげる。2024年5月7日に発表した。

 スーパーマーケットを展開するイオンリテールは、発注量や販売価格をAI(人工知能)技術で算出するシステムを導入している。品切れや過剰発注などを防ぎ、食品廃棄ロスの削減につなげるとともに、店舗スタッフの教育時間と業務時間を減らすのが目的だ。導入部門では、在庫削減や業務効率化に効果が得られていることから、導入部門を2024年5月から順次拡大する。

 導入部門を拡大するのは、(1)「AIオーダー」と、(2)「AIカカク」の2つのシステム。AIオーダーは、発注量を提示するシステム(図1)。来客予測数や販売実績などのデータに、曜日・価格・気温・プロモーションなどの情報を合わせて機械学習した予測モデルを用いている。

図1:発注数を提示する「AIオーダー」のシステム概要

 AIオーダーは2023年、漬物やチルド飲料、チーズ、ハムなどの日配品約1000品目・380店舗を対象に導入を開始した。それ以前の発注システムと比較し、予測精度を最大40%改善できたことで、在庫を平均3割、発注作業時間を平均5割、それぞれ削減できたとして適用拡大を決めた。2024年6月から、日配品とデリカの冷惣菜やサラダへの発注にも適用する。

 一方のAIカカクは、店頭にある商品のバーコードを読み取り陳列数を入力すれば値引き率を提示するシステム。販売実績、天候、客数などの条件を学習したAIを用いている。値引きシールも自動で印刷する。

 2021年5月から惣菜部門と日配品部門の一部に導入してきた。導入前と比べロス率が1割以上低減できたことから、2024年5月8日から畜産部門に、5月22日からは水産部門にも導入した。適用対象は約1200品目・約380店舗になる。導入拡大にあたっては、店舗特性を考慮し価格の最適化を図るモデルを調整し、販売特性や値引きによる売れ方の変化などを分析できるようにした。

 両システムは本IBMの支援を受けて共同開発した。日本IBMのデータサイエンティストとコンサルタントが予測モデルとシステム構築を手がけた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名イオンリテール
業種流通・小売り
地域千葉市(本社)
課題品切れや過剰発注などによる食品廃棄ロスを削減したい。適切な発注数や価格決定を店舗スタッフに教育するには時間がかかり、従来のシステムを利用すると業務時間がかかる
解決の仕組み発注量や販売価格をAI(人工知能)技術で自動算出するシステムを導入する
推進母体/体制イオンリテール、日本IBM
活用しているデータ過去の販売実績データ、店頭の商品陳列数、曜日・価格・気温・プロモーション、店舗特性などの情報
採用している製品/サービス/技術発注システム「AIオーダー」、価格決定システム「AIカカク」(いずれもイオンリテールと日本IBMの共同開発)
稼働時期2021年5月(AIカカクの導入開始時期)、2023年(AIオーダーの導入開始時期)