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エスプレッソマシンのスイスOlympia Express、全部品の設計データを3Dモデル化し設計と製造を一体化

DIGITAL X 編集部
2024年7月8日

スイスのエスプレッソマシンメーカーのOlympia Expressは、すべての部品の設計データを3D(3次元)モデルにし、設計と製造の一体化を図っている。堅牢かつ長寿命の製品を製造できるよう、設計変更の柔軟性を高め試作コストを削減するのが狙い。3D CAD(コンピューターによる設計)ソフトウェアを提供する米シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが2024年6月27日(現地時間)に発表した。

 スイスのOlympia Expressは、創業から100年近いエスプレッソマシンの製造会社。設計精度を高め堅牢かつ長寿命の製品を製造するのを目的に、すべての部品の設計データを3D(3次元)モデルに置き換えている。設計変更の柔軟性を高めながら試作品の製造コストを削減するためだ。スイス・グラールスの生産拠点では、試作品の作成に要する労力を半減、設計プロセスの生産性は最大30%向上しているという。

 3Dモデル化に向け設計ツールを3D CAD(コンピューターによる設計)ソフトウェア「Solid Edge」(米シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア製)に統一している。新製品の設計では、部品の流用を前提に、寸法や形状などの変更作業の効率を高めることで試作品の作成期間を短縮した。

 3Dモデルを可視化する機能を使い設計状況の視認性を高め、製品開発に関連する担当者間のコミュニケーションの向上を図っている。従来は設計に、2D(2次元)モデルを用いており、設計変更に時間を要したほか、形状や構造を視覚的に表現するには限界があった。

 また必要なスペアパーツの選定に、3Dモデルを分解し部品の関係性や組み立て手順を確認する機能を利用している。50年前の製品に対する補修にも対応できるとして、アフターサービスやメンテナンスの充実を図る。

 CADソフトウェアとCAM(Computer Aided Manufacturing:コンピューター支援製造)ソフトウェアと連携し、設計データから最適な加工プログラムを自動で生成している。生産には3Dプリンターを活用しており、スペアパーツの生産性を高めたり、試作段階で素材ごとの部品の感触を確認したりしている。

 設計データは、PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)で管理し、設計やバージョンの変更に伴うデータ改訂時の安全性を高める。製品の性能・品質の評価レビューの履歴も管理している。

 Olympia Express CEO(最高経営責任者)のトーマス・シャッティ(Thomas Schätti)氏は、「高精度の3Dモデルを作成し、設計から製造までの生産プロセスを合理化することで、開発者の時間とリソースを節約しながら成果を上げられる」と話す。成果の一例として、2023年に発表した持ち運び可能な「Minaポータブルコーヒープレス」を挙げる。

 CAMソフトウェアには「NX CAM」(米シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア製)を、PLMソフトウェアには「Teamcenter」(同)を、それぞれ導入している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名Olympia Express
業種製造
地域スイス・チューリッヒ(本社)
課題堅牢かつ長寿命のエスプレッソマシンを製造するためには、設計の柔軟性を高めるとともに、試作品の製造コストを抑える必要がある
解決の仕組みすべての部品の設計データを3次元モデルで作成し、関係者間のコミュニケーション効率を高めるほか、CADとCAMの連携と3Dプリンターの活用により、試作品やスペア部品を作成する
推進母体/体制スイスOlympia Express、米シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア
活用しているデータエスプレッソマシンの設計データ
採用している製品/サービス/技術3D CADソフトウェア「Solid Edge」、PLMソフトウェア「Teamcenter」、CAMソフトウェア「NX CAM」(いずれも米シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア製)
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