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永坂産業と石橋財団、美術館が入る複合ビルの維持管理にBIMデータを活用

ANDG CO., LTD.
2024年7月26日

不動産管理の永坂産業と美術館運営の石橋財団は、美術館が入居する複合ビルの維持管理に、設計・施工時に作成したBIM(Building Information Modeling:建物情報モデリング)データを活用する。そのための設備管理基盤を2024年6月に稼働させた。ビルの維持管理コストの削減と美術品に適した展示環境を保つのが目的。システム導入を主導した日建設計が2024年6月11日に発表した。

 BIM(Building Information Modeling:建物情報モデリング)データをビルの維持管理に利用するのは、不動産管理の永坂産業と美術館運営の石橋財団が管理・運営する「ミュージアムタワー京橋」(東京都中央区)。地上 23 階、地下 2 階建ての複合ビルで、オフィスのほかに、1〜7階部分に石橋財団が所有する「アーティゾン美術館」が入居する。

 今回、ビルの維持管理コストの削減と美術品に適した展示環境の保全を目的に、ビルのFM(Facility Management:設備管理)のためのデータ基盤となる「統合FMプラットフォーム」を構築(図1)BIMデータの取り込みなどが完了したことから、2024年6月から運用を始めている。美術館用途でBIMデータを運用するのは、国内では、これが初めてという。

図1:永坂産業と石橋財団が「ミュージアムタワー京橋」に導入した「統合FMプラットフォーム」の機能と位置付け

 永坂産業は「4万平方メートルを超える複合用途ビルへの導入はあまり前例がない。管理業務の効率化と長期の継続使用のためには統合基盤が必要だと判断した。協力企業の業務効率化にもつながる」と、統合FMプラットフォームに期待を寄せる。

 石橋財団は「施設の長期修繕計画を見据え導入を決定した。美術作品の展示に適した環境を24時間、年間を通して保全し、来場者に快適な鑑賞環境を提供し続けたい」としている。

 統合FMプラットフォームは、建物の基本情報や設備・資産を台帳として管理する。オフィスと美術館の区分所有範囲を明らかにするほか、設備・資産を修繕・更新した際は、その履歴をBIMにひも付けして管理する(図2)。そのために設計・施工時に作成・利用したBIMデータを、オープンなファイル形式「IFC(Industry Foundation Classes)」に変換し取り込んだ。

図2:統合FMプラットフォームでは、BIMデータから取り出した3次元モデルに属性情報を統合管理する

 データの取り込みにおいては、設計・施工用のBIMには維持管理用途には必ずしも必要ないデータが含まれるため、維持管理用にデータの粒度や種類を揃えた。データの容量を減らし、Web上で閲覧できるよう軽量化も図っている。

 さらにビルに取り付けたIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーで取得するデータを連携し、室内環境を可視化する試みも始めている。デジタルツイン作成ソフトウェア「Tandem」(米Autodesk製)を使い、BIMデータを3次元化し、センサー情報に基づく建物の状態を確認できるようにする。

 統合FMプラットフォームの導入では、ミュージアムタワー京橋を設計した日建設計がプロジェクトマネジメントを担当。建物維持管理システム「FM-Integration」(FMシステム製)をベースに構築した。プロジェクトには、日建設計とFMシステムのほか、トランスコスモス、三井不動産ビルマネジメント、三井住友信託銀行が参加した(表1)。

表1:「統合FMプラットフォーム」導入プロジェクトに参加した5社と、それぞれの役割
会社名役割
日建設計プロジェクト主幹としてのプロジェクトマネジメントと、BIMおよび「統合FMプラットフォーム」に対する技術的な助言
FMシステム設備管理システム「FM-Integration」の提供
トランスコスモス設計・施工用のBIMデータから維持管理用途に適したBIMデータの作成
三井住友信託銀行ベンダーおよびシステムの選定支援
三井不動産ビルマネジメント統合FMプラットフォームの運用と追加情報の入力

 日建設計は今後、ミュージアムタワー京橋における統合FMプラットフォーム基盤の利用状況や成果を検証し、ユースケースに合わせた操作性の改善やカスタマイズ機能の開発、運用マニュアルの作成などに取り組む。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名永坂産業、石橋財団
業種サービス
地域東京都中央区(永坂産業の本社、石橋財団の事務所)
課題オフィスと美術館が混在する複合ビルの維持・管理コストを削減するとともに、美術館の展示に適した環境を保ちたい
解決の仕組み設計・施工用のBIMデータを維持管理用に転用し、修繕や更新の履歴やビル内のIoTデータと共に一元管理する
推進母体/体制永坂産業、石橋財団、日建設計(プロジェクト主管)、FMシステム、トランスコスモス、三井住友信託銀行、三井不動産ビルマネジメント
活用しているデータ設計・施工BIMデータ、修繕・更新の情報、設備のIoTデータなど
採用している製品/サービス/技術設備管理基盤「統合FMプラットフォーム」(日建設計らが協力し永坂産業・石橋財団が開発)、デジタルツイン作成ソフトウェア「Tandem」(米Autodesk製)
稼働時期2024年6月(運用開始時期)