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TOYO TIRE、EV需要などに応じ開発時のシミュレーション環境を高速化し計算時間を半減

ANDG CO., LTD.
2024年9月5日

TOYO TIREは、CAE(Computer Aided Engineering:コンピューターによる開発)におけるシミュレーション環境の高速化を図った。大規模シミュレーションの計算時間を最大で半減できたという。シミュレーションによりタイヤの試作回数を減らし、EV(電気自動車)向けなどグローバル市場の新需要への対応力を高める。2024年7月16日に発表した。

 TOYO TIREは、独自のタイヤ設計プラットフォーム「T-MODE(ティーモード)」を構築・運用している。2019年には、CAE(Computer Aided Engineering:コンピューターによる開発)環境にAI(人工知能)技術を使った設計支援技術を組み込んでいる。

 今回、T-MODEの実行環境としてHPC(High-Performance Computing system)環境を導入し、シミュレーションなどの高速化を図った(図1)。タイヤの開発時の試作回数を減らし、EV(電気自動車)向けなど自動車業界におけるグローバルな新市場の需要に応えられるようにするのが目的だ。HPC環境はこれが第7世代になる。

図1:TOYO TIREはタイヤ設計プラットフォーム「T-MODE(ティーモード)」のHPC環境を第7世代に代え、シミュレーションの高速化を図った

 CAEアプリケーション「TOYO-FEM」(トーヨーエイテック製)のソースコードのチューニングと合わせて、単位時間当たりに処理できるデータ量やスループットの能力を高め、CAEの性能を3倍に高速化したという。タイヤの構造や形状に関する設計仕様を導き出す逆問題に関する計算・予測精度の向上も図った。

 TOYO TIRE 執行役員 技術開発本部長の水谷 保氏は、「自動車業界全体がデジタル開発を加速させている。試作や性能評価試験をCAEに置き替えることは、開発の高速化やコスト削減には欠かせない流れだ」と話す。

 HPC環境としては、米HPE(ヒューレット・パッカード エンタープライズ)が提供するハイブリットクラウド基盤「HPE GreenLake」を利用し、高速計算ができる「HPE Cray XD2000」をオンプレミスに導入した。GreenLakeは、オンプレミス環境においてもサービスの利用分だけの月額料金を支払うモデルを採用しており、コストの適正化と支払いに関する社内の事務手続きの単純化が図れたとしている。

 TOYO TIREは現在、日本、米国、中国など世界5カ国に製造拠点をおいている。同社によればタイヤの開発では、安全性を保ちながら、摩耗への耐久や走行ノイズの低減、環境性能の向上といった機能の向上が望まれている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名TOYO TIRE
業種製造
地域兵庫県伊丹市(本社)
課題タイヤ開発の試作回数を減らし開発のスピードアップを図りたい
解決の仕組みCAEの同社環境にHPCを導入し、シミュレーションの速度・精度を高める
推進母体/体制TOYO TIRE、米HPE(ヒューレット・パッカード エンタープライズ)
活用しているデータタイヤの性能データ
採用している製品/サービス/技術CAEアプリケーション「TOYO-FEM」(トーヨーエイテック製)、HPC環境「HPE Cray XD2000」を「HPE GreenLake」モデルで導入(いずれも米HPE製)
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