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福岡市、イチゴのハウス栽培における栽培環境制御を実証実験

DIGITAL X 編集部
2024年12月11日

福岡市は2024年12月1日、スマート農業の実証実験を開始した。肥料・土壌を管理するコントローラーや、いちごの収穫ロボットを活用し都市型農業の半自動化を目指す。システムを開発するアイナックシステムが2024年11月26日に発表した。

 福岡市が実施するのは、イチゴの栽培における肥料や土壌などの管理から収穫までを半自動化するための実証実験。市内西区にある今津リフレッシュ農園で2024年12月1日から開始した。

 実験では、水・液肥・土壌などの栽培環境を管理するコントローラーを栽培棚に設置。同じビニールハウス内でも異なる条件下で栽培できる仕組みの構築を検証する(図1)。条件の制御により実が生育する速度を変えてリスクを分散し、定量生産ができるようにするのが目的だ。

図1:実証実験で目指すいちご生産方式の概略

 実験では、いちごを自動で収穫するロボットも検証する。事前に設定したルートに沿って走行しながら、いちごの大きさをAI(人工知能)技術で判定し、収穫に適したいちごだけを選定・収穫する。生産者は収穫の作業時間を約60%削減できるとする。いちごに触れずに収穫するため、従来より4日ほど長持ちするともいう。

 管理・制御のためのコントローラーと収穫ロボット「ロボつみ」は、いずれもアイナックシステムが開発した(図2)。同社は、福岡市がスマート農業の推進目的で実施する「Fukuoka City スマート農業マッチングプロジェクト」の中で、2024年8月に他の2社とともに採択されている。同プロジェクトは、生産者の課題/ニーズと企業が持つ技術/アイデアのマッチングを図るものだ。

図2:実証実験で活用する、いちご収穫ロボットや土壌などの管理・制御システムの例

 福岡市によれば、多くのいちご農家は現状、ビニールハウス内の環境を一括制御しており、何かあれば生産している、いちごの全てが収穫できなくなる危険性がある。また、いちごの収穫は、ピーク時には連日、朝から夜まで続き現場作業は過酷になる。こうした課題を解決する技術の開発を実証実験を通じて後押しする。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名福岡市
業種公共
地域福岡市西区(今津リフレッシュ農園)
課題いちごのハウス栽培において、全体を同じ栽培環境におくことのリスクを分散させたい。収穫時などの生産者の作業負荷を軽減したい
解決の仕組み水・液肥・土壌温度・補光といった、のいちご栽培環境を管理し、1つのビニールハウス内でも複数の環境を維持し、収穫時期を分散させる。収穫作業はロボットで自動化する
推進母体/体制福岡市、アイナックシステム
活用しているデータ水・液肥・土壌などの栽培環境のデータ、いちごの画像
採用している製品/サービス/技術大規模農場潅水システム「AguRo-W」(アイナックシステム製)、局所土壌ヒーターシステム「AguRo-T」(同)、いちご収穫ロボット「ろぼつみ」(土)
稼働時期2024年12月1日(実証実験の開始日)