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旭化成、研究開発や製造現場での技能継承に生成AIの利用を本格化

ANDG CO., LTD.
2025年1月8日

旭化成は、研究開発や製造現場における技能継承に向けて生成AI(人工知能)技術の組織的活用を本格化させる。材料の新規用途による競争力強化や、製造現場の安全性向上などに役立てる。2024年12月9日に発表した。

 旭化成は、生成AI(人工知能)技術の組織利用を本格化させる。主に熟練者からの技術伝承を目的に、まずは(1)材料の新規用途探索と、(2)製造現場でのリスク管理などに利用し、新製品の開発競争力強化や製造現場の安全性向上を図る(図1)。

図1:旭化成がグループ全体で進める生成AIの活用方針

 材料の新規用途探索では、文献データを解析するAIと、有望な用途候補を選別する生成AIを組み合わせ、専門家でも時間がかかる作業の効率を高める。すでに膨大な文献データから6000以上の用途候補を考案したほか、ある材料においては、候補の選別作業時間を従来の約40%に短縮できたという。今後は、新しい材料の設計・開発や医療の分野にも適用を図る。将来的には他社製品の技術分析や協業先の選定にも活用したい考えだ。

 製造現場のリスク管理では、設備の安全運用における危険予知活動に利用する(図2)。過去の危険事例データを基にリスクと対応策を洗い出し、チェック項目を作成することで、経験の浅い従業員でも危険予知に携われるようにする。今後は、工場のセンサーで取得した画像や音声などの非構造化データを解析し、作業中の危険回避にも役立てる。

図2:危険予知における生成AIの活用とチェック項目の作成例

 組織利用においては、各組織のデジタル人材が、それぞれの業務に合わせた生成AIを構築し、管理・運営する。そのためのシステム開発は、生成AIの専任組織である「生成AI・言語解析ユニット」と、生産現場を支援する「スマートファクトリー推進センター」とが協力し支援する。実際、材料探索システムは、組織のデジタル人材と専門家チームの連携により開発できたとする。

 旭化成は生成AIの活用テーマを(1)個人利用と(2)組織利用とに分けており、個人利用を先行させていた(図3)。2023年5月から生成AI活用によるグループ全体の業務効率化を推進。これまでに書類作成や社内資料検索などでは1カ月当たり2157時間の時間短縮を実現しているという。

図3:旭化成の生成AI活用テーマ。大きく個人利用と組織利用とに分けている

 2023年12月からは、社内システムの開発者向けに生成AIモデルの利用基盤を公開している。例えば書類監査では専用の生成AIを開発し、年間1820時間の業務時間短縮を図っているとする。

 従業員のスキル育成策として、デジタル教育「旭化成DXオープンバッジ」内に生成AIコースを開講。AIアシスタント「Microsoft 365 Copilot」(米Microsoft製)といったツールの操作スキルの習得や、業務に特化した技術と知識の教育に力を入れている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名旭化成
業種製造
地域東京都千代田区(本社)
課題新製品開発における競争力強化や製造現場の安全性向上につながる熟練者の技能を継承したい
解決の仕組み生成AIの組織利用を進め、材料探索や生産現場の危険予知などに利用する
推進母体/体制旭化成
活用しているデータ材料研究の文献データ、実験データ、設備運用に関わる過去の事例、設備のセンシングデータなど
採用している製品/サービス/技術新規用途探索のための生成AIや製造現場の危険予知のための生成AI(旭化成製)
稼働時期2024年12月(システム開発者への生成AIモデル利用基盤の公開時期)