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住友電工、国内外29万人が社内情報を生成AIで活用するためのRAG基盤を構築

ANDG CO., LTD.
2025年3月28日

住友電気工業は、社内情報の生成AIを使って有効活用するためのRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)基盤を構築した。社内にある各種情報から信頼性の高い回答を生成し業務効率を高める。グループ国内外の約29万人が利用する。システムを開発した住友電工情報システムが2025年3月7日に発表した。

 住友電気工業が構築したのは、社内情報を生成AI(人工知能)で活用する際に、その社内情報を安全に検索・活用するためのRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)基盤(図1)。社内のサーバーやデータベースにある社内情報から必要な文書を検索し、その結果を生成AIに渡すことで信頼できる回答を生成し、業務効率を高めるのが目的だ。生成AIによる社内情報検索は、国内4万人、海外を合わせて計約29万人が利用する。

図1:住友電気工業が構築したRAG基盤の概要

 構築したRAG基盤は、ファイルサーバーや文書管理システムが持つ180万の文書と、5万ページある社内のWebサイトなどをデータソースにする。総容量は400テラバイトに上る。利用者が社内の検索システムに対し自然言語ベースで検索すると、関連情報を全文検索により横断的に抽出し、その結果に基づいた回答の作成を生成AIにリクエストする。

 回答は、利用者のアクセス権に応じて参照できる範囲内で返す。生成AIには質問内容を学習させない設計にすることで、個人情報や機密情報を含む質問による情報漏えいリスクを排除している。

 住友電工は2023年10月、生成AIサービスの「ChatGPT」(米OpenAI製)をグループ全社に展開して利用を推進してきた。利用が拡大するにつれ、各部門から「生成AIで社内情報を活用したい」という要望が多数寄せられたことからRAG基盤の構築を決めたとしている。

 RAG基盤は、グループ会社の住友電工情報システムが開発する企業内検索システム「QuickSolution」の生成AI連携機能を用いて構築した。QuickSolutionはグループ全社で利用してきたため、社内データをクラウドにアップロードすることなく、そのまま活用でき、約2週間でRAG基盤を構築できたという。

 住友電工は今後、RAG基盤の継続的な改善を続け検索精度や回答品質を高めるとともに、情報源となるデータ対象の拡張を予定し、生成AIの活用を積極的に推進する方針だ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名住友電気工業
業種製造
地域大阪市中央区(大阪本社)
課題生成AIを全社規模で利用しているが、活用が進むにつれ、社内情報を有効活用したいという要望が高まってきた
解決の仕組み社内情報を扱うRAG基盤に構築し、情報漏えいなどのリスクを排除しながら、社内情報を生成AI経由で検索・利用する
推進母体/体制住友電工、住友電工情報システム
活用しているデータファイルサーバーや社内システムに蓄積した社内文書や社内Webサイトのページ情報など
採用している製品/サービス/技術企業内検索システム「QuickSolution」(住友電工情報システム製)
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