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J:COM、コンタクトセンターでの通話から顧客の感情を生成AIで分析し品質評価の指標に

DIGITAL X 編集部
2025年4月8日

J:COMは、コンタクトセンターにおける通話内容から顧客の感情を分析するための生成AI(人工知能)システムを構築した。通話中の感情変化を数値化し、オペレーターの応対品質を測る新たな指標として利用する。アンケート型NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)では難しかった顧客の本音を可視化し、顧客対応品質を高める。2025年4月1日に発表した。

 J:COMは、同社が「カスタマーセンター」と呼ぶコンタクトセンターを国内14拠点で運用し、各拠点やマーケティング領域における顧客接点への生成AI(人工知能)技術の適用を進めている(図1)。その一環として、コンタクトセンターでの通話内容から顧客の感情変化を可視化する仕組みを構築した。顧客が抱える本質的な課題や潜在ニーズを捉えるのが目的だ。

図1:J:COMが全社的に推進する生成AI活用の概要

 感情分析では、通話データから、会話全体の文脈や顧客の発話意図、声のトーンや感情の抑揚などを生成AI技術で解析し、ネガティブ(Negative)から中立(Neutral)への転換率を数値化する。

 オペレーターの応対品質の測定ではこれまで、顧客ロイヤルティを示す指標「NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)」に基づくアンケートで評価していたが、回答数の確保や評価理由の把握が難しかった。数値化により、通話開始時に中立またはネガティブだった感情が終了時にポジティブ(Positive)に変化した場合、NPSが高くなる相関が認められたという(図2)。2025年度から最終ポジティブ率をオペレーターの応対品質を評価するKPI(重要業績評価指標)として利用する。

図2:J:COMが実施した感情分析におけるNPSと最終ポジティブ率の相関例

 生成AI技術はVoC(Voice of Customer:顧客の声)の分析や要約にも利用している。VoC分析では、問い合わせ内容や意図、背景を整理・体系化し、分類数を約3000種類に拡大した。従来、手作業によるVoC分析では分類数は約150種類だった。分類を細分化したことで、顧客理解の解像度が高まっているとする。

 VoCの要約では、1日当たり5000件の通話データに対応し、オペレーター約10人分の作業量に相当する月間1500時間以上を削減し、顧客の待ち時間短縮につながっているという。

 利用する生成AIは、大規模言語モデル「Gemini」(米Google製)。今後は、応対履歴の入力やケース処理などの後工程の自動化を進め、2027年度までに顧客1人当たりの平均対応時間を40%削減を目指す。

 J:COMは2024年度に全社でのAI技術活用に向けた「AI-CoE(AI Center of Excellence)」を設立し、社内横断的なAI技術の選定や導入・展開を進めている。2025年度は、同社の主力である映像サービス分野における商品/サービスにも生成AI技術を組み込むことを検討し活用の範囲を広げる計画である。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名J:COM
業種サービス
地域東京都千代田区(本社)
課題顧客接点において顧客の本質的なニーズを把握し、コンタクトセンターにおける応対品質を高めたい
解決の仕組み通話内容を生成AI技術で解析し顧客の感情の変化を数値化し、オペレーターの応対品質を、より客観的に評価する
推進母体/体制J:COM
活用しているデータコンタクトセンターにおける顧客との通話データ
採用している製品/サービス/技術大規模言語モデル「Gemini」(米Google製)
稼働時期2025年度(感情分析の評価指標への採用時期)