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森永乳業、アイスの新製品の需要を予測するAIシステムを導入
森永乳業は、アイスカテゴリーでの新製品の需要予測するAI(人工知能)システムを導入した。販売・生産計画の立案における属人化を解消するとともに、データに基づく意思決定の仕組みを構築するのが狙い。システム導入を支援したNECが2025年4月7日に発表した。
森永乳業が導入したのは、アイスカテゴリーにおける新製品の需要を予測するシステム。同社が保有する過去の販売実績やマーケティング施策データ、および需給業務担当者の知見を元に新製品の需要を予測する。販売計画や生産計画の立案時における属人化を解消するとともに、データサイエンスに基づく意思決定の仕組みを構築するのが目的だ。
導入に向けて2024年10月から12月にかけて需要予測システムの実証実験を実施し、需給業務担当者が取引先との商談から得る営業担当情報を元に立案した計画と、ほぼ同等の精度で需要を予測できることが確認。データの整理と分析を継続することで予測精度の向上が期待できることから実導入を決めたという。
実験では、まず新製品の需要予測時に参考にする既存製品(ベンチマーク製品)の選定した後に、ベンチマーク製品と新製品の情報の差に基づき需要を予測した(図1)。
ベンチマーク製品は、異なる新製品10点を題材にAIシステムで選定した。AIシステムには、商品の販売価格や発売季節、販売チャネル、マーケティング施策の観点を学習させた。結果、人が選定したベンチマーク製品と同様の商品を9割の確率で選定できたという。このベンチマーク製品の需要の因果関係をAIでモデル化し、担当者と、ほぼ同等精度の需要予測を実現したとする。
ベンチマーク製品と新製品の情報の差に基づく需要予測では、ベンチマーク製品の売上実績とマーケティング施策などの因果関係をAIでモデル化し、新製品の情報や計画値から発売から3カ月間の需要を予測。さらに、この3カ月間の需要予測結果を元に発売から1年間および月次の需要も予測した。
1年間および月次の需要予測結果に対し、原材料の調達や中長期的な生産の過不足の調整計画、事業計画および予算達成に向けた現状分析と評価などにりようできるかどうかを検証した結果、その有用性を確認できたとしている。
需要予測システムには、NECの「Advanced-S&OP 新製品需要予測ソリューション」を採用した。NEC独自のAI技術と、データ分析の専門家の分析知見、SCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理)およびS&OP(Sales & Operations Planning:販売・業務計画)領域の専門家の知見を組み合わせることで、従来手法より早い段階で新製品の需要を予測できるという。
NECによれば、多くのメーカーが、発売に伴う取引先との商談よりも前に、原材料の調達や生産ラインの確保、物流の手配などに向けた販売・生産計画を立案している。商談結果を踏まえ計画を見直すものの、販売実績データがある既存商品に比べると誤差率が高く、欠品や過剰在庫が発生しやすい。さらに年単位など中長期的な需要予測は難しく、事業・予算計画の達成に向けた現状分析や評価が困難である。熟練社員が予測するケースでは、属人的な判断に加え、根拠の透明性や再現性の低さが課題になっている。
企業/組織名 | 森永乳業 |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都港区(本社) |
課題 | 取引先との商談より前に新製品の販売・生産計画を立案するものの、販売実績データがある既存商品に比べ誤差率が高く、欠品や過剰在庫が発生しやすい。熟練社員による予測では、属人化に加え、根拠の透明性や再現性が低い |
解決の仕組み | 新製品の需要をAI技術を使って予測する |
推進母体/体制 | 森永乳業、NEC |
活用しているデータ | 過去の販売実績やマーケティング施策データ、および需給業務担当者の知見など |
採用している製品/サービス/技術 | 「Advanced-S&OP 新製品需要予測ソリューション」(NEC製) |
稼働時期 | 2024年10月(実証システムの稼働時期) |