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住友化学、工場のエネルギー効率を高めるための数理最適化システムを開発

DIGITAL X 編集部
2025年4月11日

住友化学は、工場におけるエネルギー効率を高めるのを目的に、数理最適化技術によるAI(人工知能)エンジンを使ったシステムを開発した。生産計画とエネルギー管理データから、エネルギー消費量とCO2(二酸化炭素)排出量を減らしながら効率的な工場運営を実現するのが狙い。全工場への導入を前に千葉工場・袖ケ浦地区で2025年3月から検証を始めている。システム開発を支援した日立製作所が2025年3月25日に発表した。

 住友化学が開発したのは、工場を運営する際のエネルギー効率を高めるためのシステム(図1)。エネルギー消費量が大きいとされる化学工場にあって、数理最適化技術によるAI(人工知能)エンジンを使い、生産量とエネルギー使用量をバランスさせ、エネルギー消費量とCO2(二酸化炭素)排出量を削減しながら効率的な工場運営につなげる。

図1:住友化学が開発した工場運営におけるエネルギー使用量を最適化するシステムの考え方

 新システムでは、工場の生産計画とエネルギー管理の両データを統合し、工場全体の状況を可視化したうえで、生産、物流、エネルギー調達など複数の計画に含まれる制約条件から、AIエンジンにより最適化を図った生産計画を立案する。

 具体的には、製造スケジュール、設備の稼働状況、電力消費量、発電設備の自家発電量、電力会社との契約情報などを連携することで、工場における生産効率と、使用するエネルギーの融通可否や自家発電力・契約電力を同時に考慮し、数理最適化技術で計算する。

 千葉工場・袖ケ浦地区(千葉県袖ケ浦市)において2025年3月から、新システムの検証を開始しており、エネルギー消費量を一定量削減できることを確認したという。同工場での検証結果をもって全国6工場への導入を検討する。

 千葉工場ではこれまで、生産計画部門とエネルギー管理部門が異なる意思決定プロセスやシステムを使用してきた。また、合成樹脂の生産計画の策定や変更には熟練者に頼っていた。新システムでは、部門を越えた調整が可能になるうえ、工場のオペレーターや現場作業員が納得感を得られる計画を立案できるとしている。

 システムは、日立製作所製の生産計画システム「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」とデータ基盤「統合エネルギー・設備マネジメントサービス」を組み合わせ、両データに数理最適化AIエンジン「TSPlanner」(同)を適用している。

 今回のシステム開発は、住友化学におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みの一環。DXの観点では、生産計画の最適化を起点に、需要予測や在庫管理、基幹システムとのデータ連携を強化することで意思決定の支援に取り組んでいる。GXの観点では、自己託送の活用やカーボンプライシング対応、需給調整市場への参画を促進し脱炭素経営を加速させたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名住友化学
業種製造
地域千葉県袖ケ浦市(千葉工場・袖ケ浦地区)
課題エネルギー消費量とCO2排出量を削減しながらも、効率的な工場運営を実現したい
解決の仕組み生産計画とエネルギー管理データを統合し、複数の制約条件を考慮したうえで数理最適化技術によりエネルギー消費量を抑えた生産計画を立案する
推進母体/体制住友化学、日立製作所
活用しているデータ工場における生産計画および消費エネルギーに関するデータなど
採用している製品/サービス/技術計画連携エンジン「TSPlanner」(日立製作所製)、生産計画システム「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」(同)、データ基盤「統合エネルギー・設備マネジメントサービス」(同)
稼働時期2025年3月(千葉工場での検証開始時期)