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順天堂大学、医療品質を支える診断支援用生成AIアプリのβ版を開発し検証

DIGITAL X 編集部
2025年5月1日

順天堂大学は、医師の診療を支援する生成AI(人工知能)アプリケーションをアビームコンサルティングと共同で開発する。このほど診療準備や問診時に医師が必要とする情報を引き出せるアプリのベータ版を開発した。医師の経験やナレッジを組織全体で共有し、地域や医師の経験にかかわらず一定品質以上の医療を提供可能にするのが目的だ。2025年4月22日に発表した。

 順天堂大学は、意思の働き方改革に向けた共同研究にアビームコンサルティングと共同で取り組んでいる(図1)。働き方改革と診療レベルの維持・向上を両立するための医療インフラを構築するために、医療現場へのAI(人工知能)技術の融合を目指している。

図1:順天堂大学はAIを使った医療サービスの開発に取り組んでいる

 その一環として診療支援のための生成AIアプリケーションを開発する。熟練医師などの知見を組織全体で共有し、経験の浅い医師でも診療の質や効率を高められるようにすることで、地域や経験による医療格差の是正につなげたい考えだ。

 このほど、診療準備や問診時に医師が必要とする情報を引き出せる生成AIアプリのベータ版を開発した。各種論文や診療ガイドラインなどのデータを取り込んでいる。医師はアプリから引き出した情報と、経験や過去の対応事例を照らし合わせながら適切な診療方針を決定する。

 PoC(Proof of Concept:概念実証)として順天堂大学医学部附属順天堂医院で実際に運用した。脳神経内科、循環器内科、総合診療科の3科を対象に利用状況や課題、改善点などを収集しながら実効性を評価した。結果、診療業務を改善できる有望な方向性として、医師の経験や知識をより高度かつ効率的に活用することが重要だと認識できたという。

 この認識を今後は正式なテーマに位置付け、医師や診療科ごとに蓄積された診療判断や治療ノウハウなどを体系化し、組織全体で再利用するためのサービスとしてベータ版を改善し、2025年7月までの開発完了を目標にする。順天堂医院での試験運用を経て、他の付属病院や外部医療機関への展開も視野に入れる。

 生成AIアプリはアビームコンサルティングと共同で、生成AIの初期導入支援ツール「生成AIスターターアプリ」(アビームコンサルティング製)を基盤に開発した。アビームのAI活用支援プログラム「AIソーシング」を使い、アプリの設計・開発・導入において連携した。

 順天堂大とアビームは2024年11月に「AIを活用した医師の働き方改革実現講座」を共同で立ち上げ、医療分野におけるAI活用の有効性を検証する研究を進めてきた。研究からは解決すべき優先課題としては(1)医師の知見の属人化、と(2)医師が専門外領域に対応しなければならない負荷の2つが大きいと判断している。

 順天堂大によれば、日本では医師の過重労働と人材不足が深刻化しており、2024年4月から時間外労働に上限が設けられたことから働き方改革の加速が求められている。加えて、都市部と地方では医療水準の格差が依然大きく、居住地に関係なく一定水準の医療を受けられることが求められている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名順天堂大学
業種医療・健康
地域東京都文京区(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
課題医師の過重労働と人材不足に起因する働き方改革が急務になっている。加えて、都市部と地方での医療水準格差が大きい
解決の仕組み医師個々の経験・ナレッジを体系化し、経験の浅い医師でも質の高い診療ができるよう支援する生成AIアプリケーションを開発する
推進母体/体制順天堂大学、アビームコンサルティング
活用しているデータ診療科・医局ごとに蓄積した診療判断・治療ノウハウ、各種論文や診療ガイドラインのデータなど
採用している製品/サービス/技術生成AIの初期導入支援ツール「生成AIスターターアプリ」(アビームコンサルティング製)、AI活用支援プログラム「AIソーシング」(同)
稼働時期2025年7月(アプリの開発完了目標時期)