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西濃運輸、危険運転をドラレコ映像から検知するAIシステムを全社に導入

DIGITAL X 編集部
2025年5月14日

西濃運輸は、ドライバーの危険運転をドライブレコーダーの映像から検知するAI(人工知能)システムを全社導入する。安全運転管理のための業務時間短縮と事故率低減の両立を図る。2025年4月から利用を始めており、同年6月までに拠点への導入を完了させる予定である。2025年5月8日に発表した。

 西濃運輸が導入するのは、ドライバーの危険運転検知システム(図1)。ドライブレコーダーの映像を対象にAI(人工知能)技術を使って検知する。安全運転管理のための業務時間を短縮するとともに、事故率の低減につなげる。2025年4月から全国の約1万台の商業車両に順次導入を始めており、同年6月までに全188拠点に展開する予定だ。

図1:ドライバーの危険運転をAI(人工知能)で検知するシステムの概要

 検知システムでは、以前から搭載していたドラレコで撮影した車内の映像データを、画像認識のためのAIモデル「VLM(Vision Language Model:視覚言語モデル)」を用いて解析し、運転中の危険挙動をリアルタイムに検出する。対象は、シートベルトの未着用、わき見運転、居眠り運転、不適切な姿勢などである。

 導入に先立ち国内2カ所の事業所で実証実験を実施した。結果、安全管理担当者がリスクのある場面だけを確認できることから、各ドライバーに対する安全確認業務において月間で最低30分の削減効果が認められた。担当者も「人間では気づきにくい挙動を検出できた」「見落としや誤検知はほぼ発生していない」などと評価するなど、解析精度の高さを確認できたとしている。

 安全運転管理について西濃運輸はこれまで、各ドライバーの走行映像を担当者が目視確認し、必要に応じて安全運転を指導してきた。確認作業に労力と時間がかかるうえ、担当者による判断のバラツキがあり、確認漏れや主観的判断による指導内容の差異などが、全社的な安全水準の平準化を阻む要因になっていたという。

 検知システムは、AI関連スタートアップの米Teatis製の「アクレス」を採用した。複数のAI解析サービスを比較検討し、解析精度の高さと出力機能の多様さを評価したとする。Teatis側では、2000時間分の商業車両の走行映像データを学習しAIモデルの精度を高めている。今後も、発進時の5点確認や6点確認など、西濃運輸が持つ安全運転指導のノウハウを学習させ機能強化を図る計画だ。

 Teatisとしては、アクレスを「オープン・パブリック・プラットフォーム」構想を掲げ、物流業界全体で利用できる基盤に発展させることを検討している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名西濃運輸
業種物流
地域岐阜県大垣市(本社)
課題ドラレコ映像を担当者が目視確認し安全運転を指導してきたが、労力と時間がかかるうえ、担当者による判断のバラツキが全社的な安全水準の平準化を阻んでいた
解決の仕組みドラレコ映像をAI技術で解析し、危険運転のみを抽出することどで作業効率を高めながら検査のバラツキを低減する
推進母体/体制西濃運輸、米Teatis日本法人
活用しているデータ商業車両に搭載するドライブレコーダーの車内映像
採用している製品/サービス/技術危険運転検知システム「アクレス」(米Teatis製)
稼働時期2025年4月(導入開始時期。同年6月までに全188拠点に導入完了の予定)