- UseCase
- 製造
ヤマザキマザック、「ファクトリーサイエンティスト」の育成で社内にデジタルの火を灯す
ファクトリーサイエンティスト協会の「FS貢献賞」を受賞
工作機械メーカーのヤマザキマザックは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の担い手として、ファクトリーサイエンティスト協会が認定する「ファクトリーサイエンティスト」の育成に取り組んでいる。このほどファクトリーサイエンティスト協会の「FS貢献賞」を受賞した。同社で人材育成に取り組む谷津 祐哉 氏が同協会の「設立5周年・年次活動報告会」の基調講演に登壇し、ファクトリーサイエンティスト育成の取り組みを紹介した。
1919年創業のヤマザキマザックは、旋盤から複合加工機、レーザー加工機などグローバルに販売する工作機械メーカーだ。愛知県丹羽郡に本社を置き、国内の生産拠点は東海地域に5カ所、サポート拠点は全国26カ所に展開。海外の生産拠点は米国、英国、中国、インド、シンガポールなど6カ所、販売/サポート拠点は87カ所に置く。約8500人の社員のうち半数以上が海外勤務という。
3年間に99人が「ファクトリーサイエンティスト」に
同社がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において力を入れているのが「ファクトリーサイエンティスト」の育成だ。ファクトリーサイエンティスト協会が提案する人材像で、次のように紹介されている。
「中小規模の製造業の構成員がIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスによるエンジニアリング、センシング、データ解析、データ視覚化、データ活用の知識を身に付けて、データを軸に経営判断を素早くおこなうアシストをおこなう人材」であり「「ものづくりの現場におけるDXやデジタル化を推進し『工場の統括責任者の右腕』になる存在」である。
ヤマザキマザックはファクトリーサイエンティスト協会に2021年に入会し、50社目の法人会員になっている。谷津氏は、同年10月に開かれた「第7回ファクトリーサイエンティスト育成講座」にヤマザキマザック初の受講者として参加した。以後は「17回にわたり複数人が受講し、この3年間で99人の社員がファクトリーサイエンティストに認定されている」(同)という(図1)。
谷津氏が2021年に受講した育成講座の最終課題は「pHセンサによるクーラントの水質管理」。切削加工に用いるクーラントのpH値を可視化し、劣化具合の監視や交換時期を自動通知するものだ。谷津氏は「それまでメカの設計を担当してきたためIoT分野は知らなかった。受講をきっかけにIoT技術をいろいろと学べた」と当時を振り返る。
その谷津氏は今、社内でのファクトリーサイエンティスト育成の推進者となり、「当社の展示会や講演会などファクトリーサイエンティトの広報活動にも取り組んでいる」という。
ファクトリーサイエンティストを増やすためにヤマザキマザックでは(1)人材育成、(2)ノウハウの形成、(3)興味の輪を広げる、の3つを推進する(図2)。
育成する人材像は「現場課題への対応力の一環として、IoT活用のアイデアが出せ、実行できる人材、すなわち『すぐ試作』『自ら作ってみる』を実践できる人材」(谷津氏)である。
そのうえで「IoTは横展開しやすいため、取り組みの成果をみんなで共有しノウハウ化する。ファクトリーサイエンティスト育成講座の最終制作も貴重な知見になる」(谷津氏)という。
さらに「会社全体でITリテラシーが高い集団になるために、ファクトリーサイエンティストへの相談から、興味の輪・改善の輪が広がるかたちを目指す」と谷津氏は説明する。