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キリンHD、内製したAIエージェントを部門ごとにカスタマイズし全社展開へ
キリンホールディングスは2025年5月から、独自開発した業務支援のためのAI(人工知能)エージェントをグループの全従業員を対象に本格展開する。資料作成や翻訳、情報収集などの業務効率を高めるのが目的だ。営業や研究など部門ごとにカスタマイズし各業務に最適化を図る。既にマーケティング部門には導入している。2025年5月12日に発表した。
キリンホールディングスは、業務支援用のAIエージェント「BuddyAI」を自社開発し、2025年5月から国内グループの全従業員、約1万5000人を対象に本格展開する。業務効率を高め、限られる人的資源を戦略的に配置できるようにするのが目的だ。2024年11月に先行導入していた約400人が所属するマーケティング部門では利用率は60%を超え、想定の約2万9000時間を上回る約3万9000時間の削減効果が確認できているという(図1)。
BuddyAIは、生成AI技術を使い自然言語で指示が出せるAIエージェント(図2)。報告書の作成やテキストの要約・校閲・翻訳、情報検索などに利用できる。精度を高めるために、過去の業務文書や企画書、製品情報、業務マニュアルなどの社内データと、各部門が持つナレッジやノウハウを取り込んでいる。
全社展開に向けて、社内システムとの連携強化やUI(User Interface)/UX(User Experience)の改善、プロンプトテンプレートの拡充を実施。eラーニング教材の整備や、社内研修プログラム「DX道場」での生成AI関連講座の増設により、利用促進と定着化を図る。加えて、部門特有の業務に対応するための機能を段階的に開発する。具体的には、営業向けの「BuddyAI for Sales」、研究開発向けの「BuddyAI for R&D」などを用意する。
マーケティング部門向けの「BuddyAI for Marketing」では、情報収集や汎用業務などのほか、市場環境分析やマーケティング戦略分析などの機能を用意した。2025年3月時点では7カテゴリ100種類以上のプロンプトテンプレートがあるとしている(図3)。
BuddyAIの開発は、2024年に始動した「KIRIN BuddyAI Project」の中核をなす取り組みだ。生成AIを「従業員の“相棒”として日常的に活用する」(キリンHD)ことを目指す。そこではデジタルの役割を「人がやらなくてよい仕事をゼロにすること(生産性向上)」と「人とともに価値を生み出す仕事を加速させること(価値創造)」と定義している。
今後は、BuddyAIを自律的に動作する「Agentic AI」に発展させたい考えだ。従業員が指示しなくても業務目的を理解してタスクを分解し、最適な動きを選択して実行、結果の報告までを自律的に処理できるようにする。
企業/組織名 | キリンホールディングス |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都中野区(本社) |
課題 | 限りある人的資源を、本来取り組むべき価値創造型の業務に最適配置できるように業務効率を高めたい |
解決の仕組み | 社内業務を支援する独自のAIエージェントを開発し、部門ごとに機能を最適化したうえで、全社展開する |
推進母体/体制 | キリンホールディングス |
活用しているデータ | 過去の業務文書、企画書、製品情報、マニュアルなどの定量データと各部門のナレッジやノウハウなどの定性データ |
採用している製品/サービス/技術 | 業務支援AI「BuddyAI」(キリンHD製) |
稼働時期 | 2025年5月(BuddyAIの全社展開開始時期) |