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三菱電機、サプライチェーン全体のCO2排出量を業界標準「Catena-X」で可視化する仕組みを実証実験

DIGITAL X 編集部
2025年5月26日

三菱電機は2025年6月1日、自動車業界におけるサプライチェーン全体のCO2排出量をデータ共有のための業界標準「Catena-X」を使って可視化する実証実験を開始する。サプライチェーン全体で発生する温室効果ガス(GHG)の排出量をCatena-Xベースに把握するシステムの確立を目指す。2025年5月19日に発表した。

 三菱電機が開始するのは、自動車業界のサプライチェーン全体を対象に、カーボンフットプリント(CFP)を自動で算出し可視化するシステムの実証実験。サプライチェーン内でのデータ交換・共有に欧州発の業界標準「Catena-X」を利用する(図1)。システム周りを手掛けるNTTコミュニケーションズと韓国SK C&Cと共に、2025年6月1日から同年10月下旬まで実施する予定である。

図1:業界標準「Catena-X」を使って自動車業界のサプライチェーン全体のカーボンフットプリント(CFP)を自動算出する実証実験の全体像

 実証実験では、EV(電気自動車)向けのリチウムイオン電池の製造工程を対象に、完成車メーカーとリチウムイオン電池のサプライヤーを想定した模擬システムを構築。完成車メーカーがCatena-X経由でサプライヤーから受け取ったデータを使って完成車としてのCFPを算出できるかどうかを検証する(図2)。Catena-Xの通信手順とデータ形式を利用することで各社のデータ主権を保ちながら企業間のデータ連携を可能にする。

図2:サプライヤーからのデータを集約しカーボンフットプリント(CFP)を算出し可視化した画面の例

 実験では、サプライヤーは製造工程のうち積層工程を担う装置からシーケンサーを使って電力やエアー、生産実績などのデータを取得し、CFP算出/モニターソフトウェアを使ってCFPを計算する。計算結果はCatena-Xの標準データ形式に変換し、自社のストレージに格納する。完成車メーカーは、必要なデータをCatena-Xの手順でサプライヤーにリクエストし、データを受け取る。

 実証において三菱電機は、製造現場での模擬環境の提供と製造現場のデータ収集を担当する。Catena-Xに準拠したシステム間データ通信機能とセキュリティの確保をNTTコミュニケーションが、収集したデータから装置単位でCFPを自算出し可視化するツールをSK C&Cが、それぞれ提供する。3社は今後、自動車産業を中心とした製造業に対しサプライチェーン全体でGHG排出量を把握するシステムを提案したい考えだ。

 三菱電機によれば、地球環境の保全において製造業では、自社のGHG排出量を把握し、エネルギー使用量を削減することで脱炭素化を推進している。だがサプライチェーン全体での脱炭素化が求められており、サプライヤー各社が品種や納入先ごとに算定したCFPの情報を、データ主権を確保しながら取引先企業と共有し、サプライチェーン全体のCFPを可視化する必要性が高まっている。欧州では自動車業界のデータ共有標準であるCatena-Xを使っての対応が始まっている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三菱電機
業種製造
地域東京都千代田区(本社)
課題サプライチェーン全体のCFPを可視化するために、サプライヤー各社が品種や納入先ごとに算定しているCFP情報を、各社のデータ主権を確保しながら取引先と共有したい
解決の仕組みデータ共有ための欧州発の業界標準「Catena-X」を使ってサプライチェーン上で必要な情報を交換できる仕組みを確立する
推進母体/体制三菱電機、NTTコミュニケーションズ、韓国SK C&C
活用しているデータ製造装置からシーケンサーにより取得した電力やエアー、生産実績などのデータ
採用している製品/サービス/技術自動車産業向けデータ共有標準「Catena-X」(Catena-Xが策定)
稼働時期2025年6月1日~2025年10月下旬(実証実験の期間)