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住友金属鉱山、製錬設備における予知保全のためのAIシステムを開発

DIGITAL X 編集部
2025年5月27日

住友金属鉱山は、製錬設備の予知保全を実現するためのAI(人工知能)システムを開発し、国内2拠点に導入した。熟練者の暗黙知をAI(人工知能)モデルに学習させることで、故障の予兆を検知すする。設備の稼働率向上や保全コストの最適化につなげる。2025年5月15日に発表した。

 住友金属鉱山が開発した「予知保全システム」は、製錬設備における故障の予兆を検知するためのAI(人工知能)システム(図1)。突発的な設備故障による生産停止リスクを回避し、製錬事業全体の持続性を高めるのが目的だ。計画的なメンテナンスの判断や部品の交換頻度の適正化により保全頻度やコストも削減する。

図1:住友金属鉱山が開発した「予知保全システム」の概要

 システムが監視する対象設備は、回転機器やチェーン、弁など。特性や製造元が異なる複数の設備に対応し、横断的な保全を可能にしたという。既に同社のニッケル工場(愛媛県新居浜市)と播磨事業所(兵庫県加古郡播磨町)の国内2拠点に導入済みで、設備の半数以上で成果を得られているとする。

 予知保全システムは、各設備にセンサーを取り付け音響や振動、温度などをリアルタイムに計測し、無線でつながるサーバーを経由してクラウド環境に各センサーデータを集約する。集約したデータは、ダッシュボード上で可視化するとともに、AI技術で解析し異常を検知する(図2)。

図2:予知保全システムのダッシュボードの画面例

 異常検知のためのAIモデルは、過去に発生した設備の異常事象のデータベースを元に、機械学習アルゴリズムを用いて開発した。精度を高めるために、熟練従業員が持つ経験や感覚などの暗黙知を抽出・言語化したデータも組み込んでいる。設備が発する異音の変化や振動の微細な差異といった直感的な判断材料をデータポイントとして整理した。

 同社によれば製錬は、粉砕、溶融/溶解、浸出、浄液、電解など複数の工程が連続し、1つの設備トラブルが全体の生産性に悪影響を及ぼす。従来、保守のタイミングや方法は、属人的な判断に頼る部分も大きかった。

 今後は、国内の他拠点のほか海外工場への展開も視野に、グローバルでの安定操業と生産性の向上を目指す。

 システムは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤「IoXプラットフォーム」(日鉄ソリューションズ:NSSOL製)を使って開発した。データの可視化には「設備状態監視ソリューション」(同)を使っている。予測モデルの開発を含めNSSOLが支援した。

 センサーの設置場所や対象データの選定、およびセンサーの導入は、日鉄グループのエンジニアリング会社である日鉄テックスエンジが支援した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名住友金属鉱山
業種製造
地域東京都港区(本社)
課題製錬設備における突発的な停止を防ぎ安定稼働させたい
解決の仕組み設備にセンサーを設置し、音響や振動、温度などのデータから、故障の予兆をAI技術で検知することで予防的保全を実現する
推進母体/体制住友金属鉱山、日鉄ソリューションズ、日鉄テックスエンジ
活用しているデータ設備の音響・振動・温度データ、過去の異常発生時のデータ、熟練従業員の暗黙知を言語化したデータ
採用している製品/サービス/技術IoT基盤「IoXプラットフォーム」(日鉄ソリューションズ製)、データの可視化システム「設備状態監視ソリューション」(同)
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