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出光興産、原油輸送の配船計画を数理最適化技術で立案するシステムを開発

DIGITAL X 編集部
2025年6月25日

出光興産は2025年4月、原油の輸送船の配船計画を数理最適化技術で立案するシステムの運用を開始した。人手に依存していた計画作成を自動化し、輸送コストを最小にできる配船計画を立案できるようにする。実証実験では作業時間を最大4割削減できており、年間数億円規模のコスト削減効果を見込んでいる。2025年6月6日に発表した。

 出光興産の「外航配船・最適化モデルシステム」は、原油の輸送に用いる外航船の配船計画において輸送コストを最小限に抑えられるルートを選定するためのシステム(図1)。2025年4月に運用を開始した。導入に向けた実証実験では、計画立案に要する作業時間が最大40%削減できたとする。年間の原油輸送コストとして数億円規模の削減効果が見込めるという。

図1:出光興産が開発した外航配船の最適化システムの概要

 新システムでは、コストや寄港数、納期などの指標条件に対し、数理最適化技術を使って最適解を総合的に評価する。原油処理計画や製油所のタンク在庫、各種原油の性質といった運用上の実データに加え、港湾や外航船の稼働条件、寄港地の制約などのインフラ的条件も考慮する。

 外航船の配船計画はこれまで、熟練の担当者が複雑な条件を考慮し、時間をかけて立案してきた。それでも最適とは言い切れない計画を選択してしまうことがあったという。導入に当たっては、従来の人手による配船立案の業務プロセスも見直し、システムに合わせて刷新した。

 システムの開発では、多様なユースケースに対応するためのパラメーターの設定と検証を繰り返した。計算時間や実務上の制約とのバランスも重視したとしている。ユーザーインタフェースも、複数の計画案を同時に立案・比較し、人が判断する必要があるような場面にも対応できるよう、提案結果に対し微修正ができるようにしている。

 開発には、AI(人工知能)を手掛けるエクサウィザーズと共同で取り組んだ。出光興産の熟練者が原油輸送に関する知見を、エクサウィザーズのエンジニアがAI関連ノウハウを、それぞれ持ち寄り、現場の業務要件を満たすアルゴリズムの設計とシステムの最適化を進めた。今後も、機能強化を図り、効率をより高めたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名出光興産
業種製造
地域東京都千代田区(本社)
課題原油外航船の配船計画において、輸送コストを最小化できる最適な計画を作成・選択したい
解決の仕組み複数の条件を総合的に評価し最適な計画を立案するために数理最適化技術を使ってシステムを開発すると同時に、システムに合わせて業務プロセスを刷新する
推進母体/体制出光興産、エクサウィザーズ
活用しているデータ港や船の受け入れ条件、航行スケジュール、製油所の原油処理計画、タンクの在庫情報、原油ごとの性質データなど
採用している製品/サービス/技術数理最適化技術
稼働時期2025年4月(運用開始時期)