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慈恵医大、外来患者に対応するAIエージェントを実証研究

DIGITAL X 編集部
2025年6月26日

東京慈恵会医科大学(慈恵医大)の総合医科学研究センターは2025年6月、千葉県の柏キャンパスにおいて、外来患者に対応するAI(人工知能)エージェントの実証研究を開始した。チャットボットとボイスボットを併用し、診療科ごとに最適化した案内ができるようにする。2025年6月17日に発表した。

 東京慈恵会医科大学(慈恵医大)の総合医科学研究センターが千葉県・柏キャンパスで実証研究するのは、外来患者に対し診療科ごとに適切な案内をするのを目標にしたAI(人工知能)エージェント。案内や予約、検査に関する問い合わせに対し、生成AIと音声対話の技術を組み合わせて実現する。病院職員の日常業務を軽減し、診療業務への集中など、患者との対話品質を高めるのが目的だ。

 慈恵医大 人工知能医学研究部の中田 典生 教授は、「AIエージェントが大きな注目を集めるなか、今回の研究は、AI技術を医療現場に実装する第一歩になり得る」と力を込める。

 研究するのは、チャットボットと音声でやり取りするボイスボットを使った対話型のAIエージェント。診療日程の確認や検査内容の案内、予約方法などに対応する。実証では(1)自動応答が実際に機能するのか、(2)診療科別に必要なFAQ(よくある質問と答)のテンプレートを構築できるか、(3)業務負担の削減にどの程度寄与できるのかの3点を検証する。病院職員と患者の双方にヒアリング調査を実施し、満足度や現場の課題を洗い出す。

 研究成果としては(1)医療職員の業務工数削減、(2)案内品質の均質化・標準化、(3)医療情報格差の是正を見込んでいる。

 AIエージェントは、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)とRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を組み合わせて開発した。医療分野のFAQや、診療科ごとの問い合わせ履歴・応対履歴などを検索・参照し応答する。定型文による回答ではなく、より自然で精度の高い案内を実現したいとしている。

 開発には、AI技術を手掛けるトゥモロー・ネットの協力を得ている。同社のAI自動応答サービス「CAT.AI(キャット・エーアイ)」を採用しチャットボット/ボイスボットを開発した。今後は、研究結果を元に、全国の医療機関への展開を視野に「診療科別FAQパッケージ」を開発するとしている。

 慈恵医大によると、日本の医療現場は慢性的な人手不足や業務の煩雑化といった課題を抱えている。特に外来窓口では、電話やWebでの問い合わせ対応に当たる職員の負担が大きい。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名東京慈恵会医科大総合医科学研究センター
業種医療・健康
地域千葉県柏市(柏キャンパス)
課題外来患者に対する案内や検査説明、予約手続きなどが病院職員の負担になっている
解決の仕組み生成AIとRAGの技術を組み合わせたAIエージェントを開発し、チャットボットやボイスボットとして診療科ごとに最適な対応ができるようにする
推進母体/体制慈恵医大、トゥモロー・ネット
活用しているデータ診療スケジュール、検査内容、予約状況、診療科ごとの問い合わせ履歴や応対記録など
採用している製品/サービス/技術AI自動応答サービス「CAT.AI」(トゥモロー・ネット製)
稼働時期2025年6月(実証研究の開始時期)