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英石油大手のシェル、プラント点検へのロボットとドローンによる巡回点検を加速

DIGITAL X 編集部
2025年6月26日

石油大手の英シェル(Shell)は、プラントの保守業務へのロボットやドローンの利用を加速する。巡回点検における作業員の安全性確保と業務効率の向上を図るのが目的だ。そのためのロボット制御システムを横河電機と開発している。横河電機が2025年6月18日に発表した。

 石油大手の英シェル(Shell)は、プラント運用のさらなる自律化と最適化に向けてロボットやドローンの導入を進めている。保守作業をロボットで代替し、作業員の安全確保と業務効率の向上が目的だ。

 ます点検用ロボットには画像認識技術を搭載し、アナログメーターや指示を読み取る。プラント現場にある視覚的な情報から機器の計測値を取得し、それを分析することで液漏れの兆候や機器の異常などを発見する。

 このほど、点検・保守業務に当たるロボットを制御するためのシステムを開発した(図1)。複数のロボットは運用管理基盤から一元管理する。分散制御システム(DCS:Distributed Control System)や安全計装システム(SIS:Safety Instrumented System)と連携し、温度や圧力、流量などの運転データから異常兆候や点検時期を判断し、ロボットにリアルタイムで指令する。

図1:英シェルが開発したロボット制御システムの概要

 シェルの統合ガス 上流およびプロジェクト&テクノロジー部門のCIO(最高情報責任者)であるゲルベン・デ・ヨン(Gerben de Jong)氏は「ロボットとAI技術を組み合わせることは、生産性と安全性の両面で大きな変革をもたらす可能性がある」とする。

 今後は、同社の2つの施設でロボットとドローンによる巡回点検を試験的に実施する。運用上の有効性や導入効果を検証し、さらなる展開に向けたフィードバックを得る。

 ロボットの制御システムは、シェルグループの技術会社である蘭Shell Global Solutions International(SGSI)と横河電機とで開発した。ロボットにSGSI製の画像認識AI「Operator Round by Exception」を搭載し、横河電機製のロボット運用管理基盤「OpreX Robot Management Core」から制御する。

 開発に向けてシェルは、画像認識や遠隔監視の技術や、設備の正常動作の評価、配管や設備の腐食を発見・予防するノウハウを提供した。SGSIと横河電機は画像認識技術の開発・強化のための研究開発ロードマップでも協力に合意している。

 なおシェルは、エネルギー分野の産官学連携拠点「エネルギー・トランジション・キャンパス・アムステルダム(ETCA)」を蘭アムステルダムに2022年に設立した。今回のロボットによる点検プロジェクトはETCAの連携成果の第1号になる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名英シェル
業種製造
地域英ロンドンランベス区(本社)
課題プラントの点検・保守業務に当たる作業員の安全確保と業務効率の向上を図りたい
解決の仕組み画像認識技術を搭載するロボットを複数台制御するシステムを開発し、現場のアナログ計器を読み取る複数台のロボットを一元的に制御することで、液漏れなどを早期に検知する
推進母体/体制英Shell、蘭Shell Global Solutions International、横河電機
活用しているデータプラント内にあるアナログメーターの値を画像認識技術で読み取った機器の温度・圧力・流量などの運転データ
採用している製品/サービス/技術マシンビジョン分析ツール「Operator Round by Exception」(蘭Shell Global Solutions International製)、ロボット運用管理基盤「OpreX Robot Management Core」(横河電機製)
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