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神鋼鋼線工業、スマートファクトリーの実現に向けデータの収集・分析環境を整備
神戸製鋼グループの神鋼鋼線工業は、製造現場のスマートファクトリー化に向けたデータ収集・分析環境を整備し、2025年5月末に運用を開始した。設備データを取得するIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤を構築し、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などのデータを加えた分析に取り組む。生産ラインの停止などを削減すると同時に、不良の原因特定や再発防止策などにつなげたい考えだ。2025年6月23日に発表した。
神戸製鋼グループで鋼線製品を製造する神鋼鋼線工業は2025年5月末、工場の操業状態を示すデータの収集・分析環境の運用を開始した(図1)。工場の操業データをリアルタイムに収集・蓄積するほか、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)のデータやBOP(Bill of Process:工程表)、日報などのデータも取り込むことで、稼働状況の可視化やデータ分析に利用する。
設備データとMESデータを組み合わせた分析により、MESデータだけでは捉えきれなかった設備の停止原因を特定し、生産ラインの短時間の停止(チョコ停)を削減し、設備の稼働効率を高める。製品や設備ごとの製造条件を時系列で分析し、不良の原因特定と再発防止に利用する。生産ラインの速度や流量なども可視化し、改善に向けた具体的な指標の提示なども期待する。
データの収集・分析環境の整備に向けては、2023年にPoC(概念実証)を実施し、2024年10月から開発・構築に取り組んできた。今後は、2025年中に主要設備を対象にしたデータ分析モデルを構築し、同モデルを尼崎事業所(兵庫県尼崎市)、ロープ製造所尾上地区(同加古川市)、二色浜地区(大阪府貝塚市)の3工場に2026年には横展開する予定である。データ分析に基づく需要予測結果を工場内のレイアウトや人員配置の策定にも利用したい考えだ。
神鋼鋼線工業 技術総括・DX推進部の佐々木 氏はデータの収集・分析環境について「中期経営計画『Next Innovation 2026』に掲げる『操業データの見える化と分析基盤の構築』の第一歩である。現場では、収集したデータを活用し勘や経験に頼らない改善が始まっている。将来的には、設備や品質の異常予兆、生産計画の最適化などへの活用を目指すが、そのための確かな土台ができたと感じている。引き続きDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを推進し、競争力ある製造現場の構築を目指す」と説明する。
環境整備は、グループ会社のコベルコシステムが支援した。同社の幾井 左 氏は「既存の生産・製造管理システムとも連携し、異常の早期発見や迅速な改善が可能になり、現場力の強化につながっている。今後は、蓄積したデータを活用したプロセス改善や省エネ、CO2削減、トレーサビリティの強化など、神鋼鋼線工業の製造DXをさらに加速させたい」としている。
企業/組織名 | 神鋼鋼線工業 |
業種 | 製造 |
地域 | 兵庫県尼崎市(本社) |
課題 | 生産ラインの停止を削減し、停止時には、その原因特定と再発防止策を早期に取り組みたい |
解決の仕組み | IoT基盤を構築し、MESなどのデータを取り込んだデータの可視化・分析環境を整備し、データに基づく操業・改善を可能にする |
推進母体/体制 | 神鋼鋼線工業、コベルコシステム |
活用しているデータ | MESデータ、BOP(Bill of Process:工程表)、日報、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤で取得する設備の稼働データなど |
採用している製品/サービス/技術 | −− |
稼働時期 | 2025年5月末(運用開始時期) |