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自動車部品の独シェフラー、工場のデジタルツインとメタバースの構築に向け米NVIDIAと協業

2030年までに100以上の工場に標準化したデジタルツインを導入

DIGITAL X 編集部
2025年6月30日

自動車部品大手の独シェフラー(Schaeffler)は、工場の設備や作業プロセスのデジタルツインを構築し、2030年までに全工場の半数となる100以上の拠点に導入する。3D(3次元)表示のメタバースも利用し、人とロボットが協働する生産工程の設計などに利用する。そのために米NVIDAと技術面で協業する。2025年6月12日(仏国時間)に発表した。

 自動車部品大手の独シェフラー(Schaeffler)が構築するのは、工場の生産工程のデジタルツインと、それを3D(3次元)表示するメタバース(写真1)。2030年までにグループ全工場の半数に当たる100以上の拠点に導入する。各拠点で共通の環境・仕様とし、生産工程の標準化も進め、ネットワーク上で統合できるようにする。

写真1:独シェフラーが構築する生産ラインのデジタルツインによる3D(3次元)表現の例

 デジタルツインでは、設備導入や仕様変更などを事前検証し、生産工程の最適化を図る。加工材料の物理的特性や、製造設備の動作、作業者の導線やロボットの動きなどを対象にする。メタバース上では、作業のバラツキや、作業者とロボットの干渉など潜在的な問題をシミュレーションにより発見し、対応策を講じる。

 例えば、軸受(ベアリング)の製造時に、液体やガスの漏れを防ぐシール材を取り付ける精密作業に対し、メタバース上でAI(技術)を使ったシミュレーションを繰り返し、自動化設備の動作を最適にするなどを想定する。

 メタバース環境では、ロボットのティーチングへのAI(人工知能)技術の適用や、人型ロボット(ヒューマノイド)など先進機器の導入も検証する。生産ラインが稼働した後も、状況変化に応じてプロセスを調整し、製品のライフサイクル全体を通して最適化を図りたい考えだ。

 同社オペレーション・業務デジタル化&IT担当シニアバイスプレジデントのロベルト・ヘンケル(Roberto Henkel)氏は「現実と遜色ない精度で機能するデジタルツインと、AI技術を用いた現場制御の仕組みが構築可能になった。当社は製造業における産業向けメタバースの発展に向け重要な役割を担っていく」としている。

 デジタルツイン/メタバースの構築・導入に向けては、米NVIDIAと技術面で協業する。NVIDAの産業用メタバース基盤「Omniverse(オムニバース)」を利用し、3Dの設計データやセンサーから得られる情報、AIの学習モデルなどを統合し、動作や挙動をリアルタイムにシミュレーションする。NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)技術を用いて処理性能を高める。

 シェフラーのCOO(最高執行責任者)であるアンドレアス・シック(Andreas Schick)氏は「当社はこれまで、常に一貫して工場のデジタル化を進めてきた。未来の生産を形作るためにはNVIDIAのような強力なパートナーが必要だ。Omniverseを導入しデジタルツインを活用することで、当社バリューチェーンのさらなる効率化とアジリティの向上を図る」としている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名独シェフラー
業種製造
地域独バイエルン州ミッテルフランケン行政管区(本社)
課題生産設備の導入・変更や各種ロボットとの協働において最適な生産工程を設計すると同時に、生産開始後も稼働状況を把握し柔軟に対応したい
解決の仕組み生産設備・生産プロセスのデジタルツインを構築し、メタバース上でのシミュレーションによって製品のライフサイクル全体の最適化を図る。そのために米NVIDAと技術面で協業する
推進母体/体制独シェフラー、米NVIDIA
活用しているデータ材料の物理的特性、加工条件、設備構成、作業者やロボットの動線など
採用している製品/サービス/技術産業用メタバース基盤「Omniverse」(米NVIDIA製)
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