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大林組、鉄骨構造物の断面設計を熟練者のノウハウを学習したAIと数理最適化技術で自動化

DIGITAL X 編集部
2025年7月3日

大林組は、鉄骨構造物の断面設計を自動化するシステムを開発した。熟練設計者が持つノウハウを学習したAI(人工知能)と数理最適化の両技術を組み合わせ、制約条件を満たす最適な断面モデルを作成する。設計業務の効率を高め、より付加価値の高い業務に集中できる環境を整える。2025年6月24日に発表した。

 大林組が開発した「構造設計支援AIプログラム」は、鉄骨構造物を対象に形状や寸法を決定する断面設計を自動化するシステム(図1)。設計者の反復作業を自動化することで、顧客の要望に応えるモデルの作成や別案や詳細の検討など、より付加価値が高い業務に集中できる環境を整備するのが目的だ。従来1週間を要していた業務を1日に短縮できるという。

図1:大林組は「構造設計支援AIプログラム」で断面設計を自動化し、詳細検討など付加価値業務に集中できるようにする

 構造設計では、安全性や経済性、加工性、建築物としての美観などを考慮しながら、要件を満たす断面を設計し、構造解析した結果を評価しながら設計を見直すというサイクルを繰り返す。顧客の要望に応えて設計をより詳細化したり、急な設計変更が発生したりすると特に大きな工数を要していた。

 構造設計支援AIプログラムを使う設計者はまず、建物の骨組みモデルに対し、柱や梁などの断面設計条件を大まかに指定する(図2)。その特徴から、部材を性質が似ているもの同士にクラスタリング(グループ分け)する。グループ数は設計者が任意に設定できる。

図2:大林組の「構造設計支援AIプログラム」の処理の流れ

 グルーピングした部材から条件に合うものを、同社の構造設計者が持つ設計ノウハウを数式化したルールベースのAI(人工知能)技術と数理最適化技術を使って選定。選定した部材の断面を一貫構造計算ソフトウェアでシミュレーションすることで問題があるかどうかを確かめる。

 部材の選定・変更とシミュレーションを繰り返しながら、設計者が初期設定した条件を満たすモデルを骨組み全体のバランスを考慮して作成する。作成したモデルは最終的には人が検証し、設計意図が反映されていることを確認したうえで設計に利用する。

 今後はシステムの適用範囲を、鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造などの混合構造へと拡大していく方針だ。システム開発には、AI技術基盤を開発するギリアが協力している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名大林組
業種製造
地域東京都港区(本社)
課題構造設計における断面設計を自動化し、設計者がより付加価値を高められ設計業務に集中させたい
解決の仕組み熟練者のノウハウを数式化したルールベースのAI技術と数理最適化技術を組み合わせて条件に合う部材を選定し、その構造計算を繰り返し、断面設計の最適化を図る
推進母体/体制大林組、ギリア
活用しているデータ建物の骨組みモデル、構造安全性・施工性・美観・加工性などに関する設計条件と評価指標、熟練者の設計ノウハウ
採用している製品/サービス/技術断面設計自動化システム「構造設計支援AIプログラム」(大林組製)
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