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自動車部品のジヤトコ、設計ノウハウや技術情報を全社で再利用するための設計基盤を構築へ
自動車用部品のジヤトコは、設計・開発現場に点在する設計ノウハウや技術情報を全社的に再活用するための設計基盤を構築する。その一環として、設計情報を構造化しRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を使って自然言語で問い合わせを可能にする仕組みの開発に着手した。技術資産を全社で利用し、手戻りの削減や品質の向上を図る。開発を支援するストックマークが2025年7月10日に発表した。
自動車用変速機や電動パワートレインを製造するジヤトコは、設計・開発業務に関する技術資産を全社で再利用するための設計基盤を構築する。その一環としてこのほど、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を使って自然言語で問い合わせ必要な情報を得るための仕組みの構築に着手した(図1)。自動車の電動化が進むなか、設計ノウハウや技術知見といった技術資産を重視し、それを再利用することで製品開発における手戻りの削減や品質の向上を図りたい考えだ。
技術資産の再利用について開発部門を統括する常務執行役員の田中 寬康 氏は「イノベーション創出に向けて、数年後に定年を迎えるベテラン層の知見という当社の財産を失う前に全社で共有できる形にしなければならない」と説明し、危機感を隠さない。
設計基盤の構築に向けては、まず生成AI技術を使い、情報の意味的なつながりを保持するナレッジグラフを生成し、キーワード検索では抽出しにくかった情報の網羅的な検索を可能にする(図2)。設計文書や図面、構成図、工程フローなどの設計データに対し、インデキシング(索引付け)とエンベディング(情報のベクトル化)の両技術により文書間の関係性を可視化し、因果構造を理解して登録する。
ナレッジベースに対してRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を適用し、自然言語での検索ができるようにする。開発の初期段階に類似事例を参照したり、意思決定の根拠を提示したりすることで、手戻りの抑制や故障分析の高度化などにつなげる。
ジヤトコ イノベーション技術開発部 主管の中崎 勝啓 氏は「設計文書は、図や表、グラフなどが中心で、単語ベースの検索では文脈理解に限界があった。ナレッジグラフを組み合わせることで、ようやく設計現場にフィットするAI技術の活用の仕方が見えてきた」とする。
今後は、複数部門に散在するナレッジを統合・再構造化する試みを全社に広げる。開発者の業務効率向上だけでなく、技術継承や人材育成の面にも効果を波及させたい考えだ。
設計基盤のデータの構造化および関連付けには、ストックマークが提供するRAG実用化サービス「Stockmark A Technology(SAT)」を採用した。従来型のベクトル検索に加え、意味のつながりを重視した情報抽出ができるという。
企業/組織名 | ジヤトコ |
業種 | 製造 |
地域 | 静岡県富士市(本社) |
課題 | 電動化の進展により開発スピードと品質の両立が求められる中、過去の設計ノウハウや技術情報を再利用し、開発効率や品質の向上につなげたい |
解決の仕組み | 設計文書などの技術情報を構造化して意味的に関連付けたナレッジグラフを作成し、RAG技術による検索を可能に技術資産を全社で再利用する |
推進母体/体制 | ジヤトコ、ストックマーク |
活用しているデータ | 設計図面、構成図、工程フローなどの技術関連文書 |
採用している製品/サービス/技術 | RAG実用化サービス「Stockmark A Technology」(ストックマーク製) |
稼働時期 | -- |